367氏の結婚式

披露宴のふたり



大学時代以来の友人367氏の結婚式に出席すべく、東京に行ってきた。この機会に、なかなか遊びに行けない、東京の義兄宅にも行ってみよう、と妊娠4カ月の相方を伴って出掛けた。


少し早めに東京入りして、デートすることにした。着いてすぐ、あれこれ欲張りに盛り込んだ品川の駅舎に少し驚きながら、パスタを食べる。
高輪の会場に近いので、エプソン水族館に行ってみた。入館するとちょうど始まったイルカのショーは、それぞれのイルカの個性を生かした楽しいものだった。ビルの中でイルカが跳ね、水中トンネルの向こうは高層ビル。とっても「らしい」スポットだ。


近いから、とのんびりしていると、式の直前になってしまった。名門のはずのホテルの、緩慢な応対や、まさかの案内間違いに焦って、義兄に挨拶もできないまま、慌ただしく相方と別れた。
…が、更衣室には、さらにギリギリになってから旧友Hが堂々と現れた。相変わらずで、まったく彼らしい。結果的には問題なく間に合って、控え室で先生や友人たちと久々の再会を喜びあうことができた。


新郎の地元ということで、親族以外はほとんど新郎の関係者で、30人あまりの落ち着いた式と披露宴だった。
二次会に、披露宴の招待客を上回る数の友人が、広島から駆けつけていたのには驚いた。


367は私の隣の研究室で、稲の研究にはげんでいた。大学に入学した時から「日本酒」に関する仕事につくことを心に決めていて、今もその一直線上にいる。あれこれ思い悩みながら、その時々に見い出した「大切と考えるもの」が並び立つようにと、パズルでも解くように職を考えていった私とは、対照的だった。367の明快さがまぶしかったものだ。
12、3年を経て、彼の仕事や仕事と深く関わる味な趣味が引き寄せた、たくさんの個性的な人々を眺めながら、たいしたものだなあ、と感心した。そして同時に、当たり前なことながら、当時はあまりわかっていなかった「人それぞれに違う生き方」が、普段は互いに見えないままに、星のようにたくさん世の中に瞬いている、ということを実感したのだった。


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