名勝で散歩

龍の口



今日の出番は昼の1時から。
朝は久しぶりにゆっくりする。


大型の台風13号が接近しているが、まだ雨粒は細かく、風も穏やかだ。
三段峡のすぐそばに宿を取っているので、ちょっと入り口部分を散歩した。名勝中の名勝で、全部歩き通すには、1日がかりになる。試合に広島へ来て、時間に余裕があるときは散歩にくるのだが、これまで一つ目の渡しの手前「黒淵」までしか行ったことがない。しかしそこまででも力強く、壮大な景色に十分圧倒される。
今日は雨で足場も悪く、試合前なので、もっと手前の「龍の口」までで引き返してきた。
普段でも、豊かな水量の清流が花崗岩の狭い岩場へ流れ込む、文字通り「龍」のような荒々しい水路が、今日は水量をさらに増して猛っていた。その前後の流れがゆったり穏やかなので、コントラストがさらにその荒々しさを強調する。


しばし、呆然と奔流を見つめ、平衡感覚が失われるような心地を楽しんでから、会場へ赴いた。
今日は50mP60Mの本戦。伏射はもともと苦手な上、いろいろな試みが成功せず、最近もっとも成績不振な種目である。今回は、予選・本戦の各60発に三姿勢の40発を加え、本射だけで180発も真剣に撃つことになるので、不振脱出の手がかりをつかむことが目標である。
結果的には、1シリーズ目で大きなミスをしてしまって非常にまずい点数に終わり、真ん中より下の順位に甘んじたのだが、これまで少しあきらめていた技術を試して、そのメリットとそれを享受するために必要な別の技術に気づくことができた。ちょっと新しい練習をする必要に気がついた。
ある種の「欠如」に気がついたわけで、すぐ明日に生かせる、という訳ではないが、ちょっとほっとして会場を後にした。


宿でテレビをつけると、大型の台風13号がいよいよ九州に上陸し、広島でも被害が出始めていた。今晩は、一応避難場所が用意され、小さな建物に住んでいる人の中には自主的に避難する人もいるとか。
2階は風と雨が窓を打つ音が激しいので、夕食をとった1階の大広間に荷物も布団も下ろして寝ることにする。
明日は、どんな荒れた試合になるのだろうか?


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