海と読書

Y103books2006-08-07


昨日は、何年ぶりかに海水浴に行った。
室津浜という小さな海水浴場で、残念ながらあまりきれいな浜ではない。

小さな頃ならば、浜辺でのんびり海を見ながらすごす、というのは退屈なことでしかなかったかも知れないが、今はそれがとても贅沢なことに思える。
少し水にはいると、まだお盆には日があるというのに、すでにクラゲが出ていて、ぴりぴりした。
泳ぐのはほどほどにして、パラソルの下で本を開いた。


森見登美彦太陽の塔」。


太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)


大学のクラブの後輩が、ファンタジーノベル大賞を取った、作品が本になるらしい、と聞いてから数年になる。
端正な顔立ちのおもしろい部員であった。コーチである私の前では、戦力としてはお役に立ちませんで…と恐縮していたが、「卒業」まで部にいて、後輩の教習もやりおおせ、きちんとしてくれていたと思う。
コンパで書きためたモノを冊子にして配ったりしており、(彼はわたしからするとクラブだけでなく農学部でも後輩だった)作家を志望するってどうすることなんだろうなぁ、と思ったりしながらそれを読んだりしたものだ。部の裏側をおもしろおかしく記した文章に、「スマートになってしまったように思ってたけど『いか京(いかにも京大生)』は健在だぁ!」とそのときは心中で快哉を叫んだ。


太陽の塔」は発刊から気になって、書評などに取り上げられるのをうれしく読みながらも、実物にはなかなか縁がなく、今回やっと手にした。


とにかく面白い。そして懐かしい。
あまりに身近すぎて、他の人にはどうおもしろいのかが、よくわからなくなるくらい「個人的な体験」として読書を楽しんでしまった。
私はここまで男汁は濃くなかったけれど、このメンタリティーと生活スタイルのままに、この舞台で7年間も大学生活を送ってきたのだった。


あんまり声をあげて笑いながら読んでいるので、相方には不審な目を向けられてしまった。


しかし森見くん、文庫化されるだけでも相当にめでたいが、学生時代にあこがれまくっていた本上まなみさんに、自分の作品の解説(しかもかなり好意に満ちた)ばかりか帯のコピーまで書いてもらって…。十分に元が取れた気分になっちゃってるんじゃないか…とちょっと心配してみたりもする。
…そんなことないか。


晩ご飯では、はもやエビ、太刀魚にあじ…淡路ならではの海の幸に酔いしれた。


[fin]