関西学連総会


今年も総会の季節がきた。
選手強化に関わって2度の合宿指導をしてはいるものの、大会さえ碌に見に行けず、普段から活動に多く関わることはできずにきている。
理事や評議員のほとんどが同様に、少しずつ自分にかかわれる範囲でできることをして連盟を支えている。


スポーツに関する組織は、名前が立派で、網羅するエリアや(学校や地名のついた)下部団体数が多いから、どんなに大層な組織かと思われることが多い。しかし、ごく一部の有名で巨大な組織を除けば、ほとんどがボランティアだけで成り立っている、(面積は大きくても)薄くて細い組織である。


今年は、関西大学の凛風館が会場だった。


射撃スポーツは、扱っている道具が道具だけに、法令遵守・安全管理がまず最優先事項としてあり、そこに競技運営や選手強化、競技普及などの事業がぶら下がる構造になっている。他のスポーツでは、最大の効果を発揮する方法をストレートに模索できるところを、射撃スポーツでは、世論や警察組織の法運用など、刻々と「時局」に応じて変化する「最優先事項」の分析・対応がまずあって、それらと「事業」に乖離・齟齬がないかを常に慎重に測りながらしか検討できないもどかしさが付きまとう。折しも、銃刀法が改正された煽りがまだ落ち着かず、ここ数年は、どの辺りが落ち着きどころになるのかを探るところに大きなエネルギーが割かれている。


銃の所持許可を受けるには、まず猟銃等講習会というものを受けて、その受講証明書を得なければならない。法改正を機に、講習修了証明試験のハードルが高くなったらしく、受講しても試験がパスできないことが珍しくなくなった。「試験モノ」については相当に百戦錬磨のはずの、京大や阪大の1年生部員ですら、半分以上落とされたりしたから、多分間違いない(大学生の質が落ちた可能性も、理論上なくはないけど)。その後、それを受講すること自体のハードルも上がり、申しこめば受けさせてくれる、という感じではなくなってきた。また講習会後の難問をクリアして証明書を得ても、それをもとに所持許可申請を出すに当たって事前に調査があり、そして申請を無事に出したら出したで、もちろん審査も長期化している。書類の期限が切れるまで審査が長引く場合もあるらしく、それは暗に所持を許可しない、ということなのだろうと想像された。
各大学射撃部には、銃を所持できないまま12月を迎えた1年生部員がたくさんいる。ひとりも持てていない、なんてところもある。法の改正は、「教習銃」という中間的な制度をなくすものであったので、入部しても、銃の所持ができなければ、一切銃器には触れることができない。射撃部員だけれど、射撃ができないまま半年以上が過ぎたことになる。


今年度の新人戦は、銃所持者だけに門戸を開き、ビームライフルなど、未所持者への暫定的な参加方法を敢えて設けなかった。
支部長が示した方針のもとで大会直前に採られたこの決断には、陰に陽に反発があった。それを整理して全体化することが、今総会の陰のポイントだった。
形式の上にそれが現れるよう、私から議題を提出してあったのだが、支部長との事前協議で「決断」の真意は理解できた。総会の中では、実質的には自ら出した議題を取り下げ、提案支持者にその理解を求める発言をした。難しい役回りだったが、混乱なく総会は閉幕した。
新人戦に銃所持が間に合わなかったが、それ以後に所持できた者については、翌年度に「新人」資格が持ち越されることになった。


銃を扱いたいという学生を大勢集めることになる学生連盟は、彼らを社会的に安全な者の集団であると保障する役割を、組織として負わされている。
新銃刀法の登場だけでなく、法の運用方法までが変化し、私たちには見えない新しい内規に従って厳格に対応してくる警察。その動きに応じるのは、非常に煩わしい。競技普及は徹底的に妨げられ、更新手続きの煩雑化によって競技続行を断念する者も続出。協会員自体も大幅に減少した。その程度についての妥当性に議論の余地はあるかもしれない。しかしまず、法の下流にいる我々は、これが銃を巡る現在の社会情勢を反映している、のであり、「理解を得る」ために支払う必然のコストが変化した、と受け止めなければならない。
かつてはもっと低いコストで得られていたものが、今はそうは行かなくなった、ということだ。今の困難な所持状況が、「現在」の時代状況において新たに射撃競技に参入する上で満たさなければならない「基準」であり、最低限超えなければならない「ハードル」だということだ。
どんな調査が行われ、どんな判断がくだされているか、そこを問うのはまた別の次元の問題である。もちろん、忙しい組織であるから、警察側の手続きの怠慢も所持がなかなかできないケースの中には含まれているかもしれない。しかし、連盟や各射撃部は、警察組織との関係づくりをきちんと行い、然るべき手続きを無駄なく早急に踏んで、できるだけ早く許可を得る努力をする以外にない。こちら側にその「基準」や「ハードル」をどうこうする権限はないのである。ハードルを乗り越えてきたものだけを構成員として迎え入れる、それが自動的に組織を社会に対して保障する仕組みとなる。新人戦において、銃所持者だけに門戸を開く、とは組織としてのその意思表示である。「共に射撃を楽しみ、競いあうためには、まず越えよ」と。


他にもいろいろあって、今年は考えなければならないことの多い総会だった。


[fin]