豪雨の西日本選手権

熊本射場



仕事の後に慌ただしく移動するのを嫌って、今大会は土曜日の昨夕、相方の実家に子どもと相方を届けてから移動した。
九州地方は相当に激しい雨が数日前から予報されていて警戒が呼びかけられていた。遠征の度にどうして今年はこう不穏な兆候のあるところへ向かうことになるのかと思わずにはいられなかった。「熊本の空の状況によっては福岡に降りるかも知れません」と再三繰り返されながら、青空も垣間見える伊丹を飛び立った。飛行機に乗ると浮遊感のためか気圧のせいか、そこまでの疲れがどっと出て眠りこけ、飛行中の記憶が一切無いということがよくあるのだが、今回もふと気がつくと、厚い雲の中で上下に細かく振り回されながら機体はどんどん降下していた。着陸してから、熊本に降りたことを知り、やれやれとターミナルを出た。その時はそれほどひどい雨ではなかったが、迎えに来てくださったAさんとKくんによると、今日行われた50m種目は、大雨の中で電子標的のトラブルが続出して大荒れの試合になったらしい。エントリー料金が返金されるというから、相当なものだったことが想像できる。夕飯をホテルの向かいの居酒屋で取り、部屋に戻るともう倒れこむように寝た。


今朝少し早めに目覚めると、外は大雨だった。目の前に水前寺公園があるのに、ホテルを一歩出ることもできない。今朝は朝8時半からの回転で、銃器検査も受けなければならない。レンタカーに乗せてもらっている手前、流れに合わせるように行動することになって、自分で時間や身体をコントロールしている感じになかなかなれない。雨で、あらゆることが大層になって、さらにいけない。


会場には7時45分くらいに着いた。重い荷物を抱えて射座へと急ぐ。試合開始前20分まで射座立ち入り禁止、とかで役員が目を光らせており、湿っぽくなった会場の狭い通路に人と荷物が溢れ用意がままならない。会場の実情を無視してこういう所ばかり悪平等を貫く姿勢にはいつものことながら閉口させられる。幸い、もう殆どの選手はすでに銃器検査を終えていたらしく、すんなり検査は受けることができて、射座の後ろに控えることができた。


時間が来て射座に入り、構えてみる。気温はそれほど高くないのかも知れないが、じっとり動かない湿った空気は相当に不快だった。昨日からここまでの行動から来る、何時までも寝起きのような冴えない身体の状態と相俟って、どうにもまずい状況だった。それでも、その辺りを意識しながらの滑り出しは、なんとかそういうコンディションをねじ伏せるものだった。
…でも、それだけだった。


99 96 97 98 96 97 583 (29X)


撃ち終わった瞬間、ついこの間もよく似た展開の試合があったな、とその成長の無さにがっくりする。はじめだけは、不調を押してねじ伏せられる、というのはいい。そこは「最近の」達成のひとつではあるだろう。しかしまずは、そういうコンディションで臨んでいることが問題で、昨日今日だけでももうちょっと工夫できなかったか、雨などの悪い天候、他の人のペースで動かないといけない、といったときにこそ「年の功」の効いた「心がけ」みたいなものがなくっちゃイカン、のだ、きっと。あと、ねじ伏せた後に「何とかいけそう」とすぐ思ってしまう「甘さ」が情けない。


やれやれ、と終えて、後はAさん、Kくんの伏射が終わるのを待つばかり。先に終えたAさんと荷物の発送を先にやってしまおうと射場を出たら、射場を降りてすぐのところの川は氾濫一歩手前になっていた。危険な土色の奔流が堤防いっぱいのところで暴れている。水防団や消防の車が出て、通行止めの検討をあちらこちらではじめている。少し進むと、もう川の間際に水田があるところでは溢れているところがあって、道の一段下は泥の海と化していた。ラジオでは、新幹線・高速道路のダウンを伝えている。
幸いにその後、撃ち終わったKくんを乗せて空港へ向かい、飛行機も空港を飛びたつことができた。


[fin]