予選突破


予選は朝9時からだった。
空には重苦しく雲が垂れ込めて、雨粒が時折激しくフロントウィンドウを叩く。
屋内射撃場に入った後も、強まったり弱まったりしながらどっと雨が地面を叩いている音が聞こえる。


身体の感覚はあまりよくなかった。
あれこれやってみるけれど、感度が下がっていて鈍く、あらゆる部分が「なんとなく」という具合で、研ぎ澄まされた感じには遠い。
仕方ないので、準備時間を長めにとって自然狙点の方向の調節を念入りにやり、あとは1発ごとに全体のバランスが整っているかどうかチェックすることで、失点を抑える方針で臨むことにした。


最初から最後まで「我慢の射撃」をしているような具合で、じりじりとしか進まなかった。最初から最後まで一定のパフォーマンスを維持し続けて、やるべきことはやりました、という充実感はもって撃ち終えた。


99 98 98 98 97 99 589


こんなものかなあ、と思う。
競技をしたというより、「性能テスト」をした、といった感じで、身体は、なにか「作業を終えた疲れ」とでもいうようなものに包まれていた。
ぎりぎり590に1点届かないあたりが、ちょっと教訓めいていて可笑しい。
どのあたりにもっと高い再現力が必要で、除くべき曖昧さが残っているかは、また気づくところがあった。


他の出場選手のみなさんは、調子が良くなかったようで、2位とは20点以上の開きがあった。
例年のこととはいえ、ここはおそらく日本で最も早く国体代表が決まる都道府県の一つであるが、今年もめでたく、国体の代表選手に内定したことになる。
来週は50mの最終予選である。三姿勢でもう一ラウンド頑張るつもりである。


[fin]