じゃんけん

ごはん作成中



保育園の帰りの車内は、あいかわらずなかなかにぎやかで楽しいらしい。


娘は、じゃんけんができるようになってきて、やりはじめたらおもしろくて仕方がない、という具合になるときがある。
すぐに勝敗が判断できて、だいたい合っているのだけれど、ときどき「うーん」と悩んだあげく間違うこともある。


どうも、パーとグーではパーの勝ち(紙と石では紙のほうが強い)、というのが、ちょっと腑に落ちないみたいだ。
勝敗の決し方が、他の二つと違うんじゃないか、という感じは、なんとなくわかる気がする。


相方は、「紙と石だったら。紙が石をつつんじゃえるから、紙のほうが強いの」という具合に、説明を一生懸命にする。
すると、娘は口をとんがらせて、
「じゃあ、紙とお花だったらどっちが強い?」
そうねえ、紙でお花は包めちゃうかなあ。
「じゃあ、鬼と狼はどっちが強い?」
…。
娘にとって最大の懸案同士の強弱は、こういうとき、尋ねずにはいられない質問である。
「じゃあ、猫と犬は?」
うーん、犬…かな?
「じゃあ、信号と、紫は?」
…?
もう禅問答である。


息子の方は、保育園で車に乗り込むと「家に帰るのだ」というのが、もうわかるようで、行きとはちがう嬉しそうな反応をするそうだ。
にぎやかなおねえちゃんの様子を見るのが大好きで、あれこれふざけたり歌ったりする横で、(他では滅多にそんなことはしないのに)声を立てて笑ったりして、とてもご機嫌らしい。
そんな息子の様子が、またさらに娘を調子づかせたりもしているのだろう。


「ぼ・く・の・だいすきな、クラーリネット!パパからもらった、クラーリネット♪」
と歌いだして、
「ママー、『コラッ!』って言ってー」
と合いの手も要求。散々元気に歌った後、急にしん、とするから、
「どうしたん?」
と尋ねると、
「…クラリネットの歌って、悲しい歌やねんなあ…」
としんみり言うので、思わず相方は吹出してしまう。
このごろ言葉がどんどん達者になってきているのは、伊達ではないな、と思わされる。


吹き出した母親を見て、再び娘は元気のスイッチが入って、そこからもまたいろいろ歌いながら帰ってきたらしい。
一緒にいる時間が多いのは大変みたいだけれど、そんな話を聞いて、うらやましいと日々思う私である。


[fin]