関西オープン初日


恒例のシーズン開幕戦。近畿の射撃界は、この試合で春を迎える。


大震災後初めての試合で、能勢にも久しぶりに来た。現地に行って苦労して帰ってきた人たちと再会する。
向こうでの話は、出会った困難やその感じ方、ともに各者各様であった。ほぼ同じところで地震に遭いながら、比較的スムーズに切り抜けられた人、ことごとく非常な苦労をして命からがらという具合だった人・・・。
外の者が新聞やテレビの報道によって、(ある範囲に限定されるものの)各所からのたくさんの情報で間接的に均一な体験しているのに対して、現場はやはり現場なもので、目の前に現れるできごとへの必死の対処そのものが全てとなる個々の現実は、到底外からは知りえない体験なのだと感じた。


協会の呼びかけで、会場の入り口では支援物資の受付をしていて、ほどなくいろいろな生活物資で射撃場の玄関はいっぱいになった。
元理事長が地震の数日後には、荷物を積み込んで現地に乗り込み、こちらの選手が帰ってくるまでに助けてくださった施設や家を回って、お礼と物資の援助をしてきた、という話を聞き、その行動の早さとエネルギッシュさに驚かされた。その猪突猛進ぶりは、常々何かと周囲と摩擦を生むのだが、こういう事態ではこういう風に発揮するものなのだと、何か事があるたびに行動力というものについて背中で教えられるところがある。


銃器検査のために道具を広げ、久しぶりに銃をセットした。
最後に触れてから1ヶ月ほどの間が開いたが、ふたたび実際にそれらを手に取ることができること、射撃ができ、試合を楽しめることが、なんと幸せなことだろうかと、心浮き立つ思いがした。


今日は、10mの三姿勢に出場した。
年に1度、この大会だけがこの種目を公式戦としてやってくれる試合となっている。
(いまひとつの点数ながらも)日本記録保持者だからということもあるが、この種目の面白さは、「射撃の楽しみ」としての「原点」みたいなところがあって、大抵エントリーする。
私の母校の射撃部は、「射撃は立射だけじゃない」、と積極的に春先にこの種目にしっかりと取り組む伝統があって、私がコーチを務める今もそれは変わらない。
全体としては、この種目に出ようという人は少なくなっているから、出場者の半分くらいはうちの部員だったりする。
今年は春の合宿に行って指導することができたから、どの部員とも馴染みがあって、随分と楽しかった。みんな、一生懸命に撃っている。


私のスコアは、100 100 96 100 98 94の 588だった。
11月の選抜クラブ対抗で座って以来の膝射がちょっと酷かったのはともかく、立射で、これだけのインターバルと体調をして、しっかり100点が撃てたのは、大きな手応えだった。
表彰式は、2位以下上位のほとんどを後輩たちが占めた。ニッチな種目ではあるけれど、彼らの成果を喜ぶ姿を見るのがとても嬉しかった。


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