荷物


地震から10日あまり。
ただおろおろとする時期をようやく過ぎた。


試合にあわせて発送した荷物のことは、直後の数日すっかりあきらめていたのだけれど、少し落ち着くと気になった。
しかし救援物資の搬送がままならない厳しい状況だ。石巻の状況もよくわかっている。
外で安全に過ごしている自分の荷物ごときのために、大変であろう現地に電話する気にはなれなかった。
水に浸かってしまったかどうかは、被災状況の情報と地図からそれとなく確かめる。
今回に限って、なぜか私は偶々市の中心部を離れたところに宿をとっていて、やや内陸にあるそこも間際の農道のところまでは水が来たという情報があったものの、津波の難は免れたらしかった。つい昨日アップされた、現地で被災した選手の報告から、そこが震災のとき現地付近にいた旅行者の行動起点となったらしいこともわかった。
それで十分だ、と思った。


今日、ふと調べ物をしているついでにホテルのHPを覗いたら、チェーンの東京本部に今回の震災に関する問い合わせ窓口があるのに気がついて、電話してみた。
そういう問い合わせはままあるらしく、時間をおいて折り返し荷物の確認ができたと連絡があった。
状況が落ち着いて、物流が回復したら着払いで送ります、と言ってもらってほっとした。
これまで20年近くの、すべての国内や海外の遠征を共にした古いスーツケースが、ただひとり震災に立会い、いまもひっそりとそこにある。
開幕戦には間に合わないかもしれないけれど、ゴールデンウィークの国体予選には間に合うのではないか。


[fin]