ひな祭りを心待ちにする娘

食べる娘



このところ、怖いものが多くて、ふいにそれが影を差してかわいそうだけれど可笑しい娘。


娘の誕生日は1月の終わりである。
以前にも書いたけれど、もうその時期は、節分が近くて、鬼のことでそわそわしている。
年中、ことあるごとにハッピーバースデイを歌い、誰の誕生日が何月にあるか、というくらい誕生日好きなのに、自分の誕生日が来たらすぐ鬼が来る、と心配になってしまうかわいそうな娘。
節分も終わってすでにかなり経つが、「もう鬼は、来年までけえへんやんな」と、今でもときどき心配している。


娘の中では、自分の誕生日が終わったら、次に楽しみな行事はは「ひな祭り」らしい。
「もうすぐ、ひな祭りやなー」を連発するので、「雛人形飾って、あられ食べるんやで」と話すと、どこでそういう風になったのかわからないのだけれど
「ちがうで、クリスマスとかと一緒で、おもち食べたりーキ食べたりするんちゃうかなー」、
「コップに入ってるケーキとかあるんちゃうかなあ」
と、お正月やクリスマスから類推するらしい、彼女なりの「楽しい行事」像がアピールされる。
「どうかなー。ちょっと違うかもなー。」


それでも年中行事がらみの歌を次々歌って娘はご機嫌だ。もっと違う歌、と新しい歌をリクエストする。
もう、ひな祭りから、お正月からクリスマスからごっちゃまぜで歌っているので、じゃあクリスマスつながりで、と相方が娘の知らないレパートリーの中から「あわてんぼうのサンタクロース」を口ずさむ。娘はうれしそうに一緒に手を叩いたりしていたが、「真っ黒の顔」というくだりで急に顔を曇らせる。
「おおかみ?」
ちがうよ、と煙突や煤のことを説明したが、
「もうその歌、ええわ。ちがうのんにしよ。」という。
鬼だけでなく、犬や狼への怖さ加減も相当なもののようだ。

しかし、だからと言って元気がないわけではない。
このところちょっとあたたかくなった、とはいえ相当寒いのだが、娘たち保育園の子らは、少し寒さが緩んだと思ったらすぐ水遊びに興じてしまう。
相方が迎えに着くと、水をせき止めてダムみたいにした泥の水溜りに、上から飛び込もうとする子が見えたので、目を疑ったら、なんとそれはうちの娘だった、という。
うわー、と思って、横を見ると、どろどろのパンツを外の水道栓のところで脱いで、自分で洗っている子どもたち。
ほどなく娘もそこに加わって・・・たくましいものだ。


昨晩遅く、相方が雛人形を出していた。
ひとつひとつは小さなかわいらしい真多呂雛だが、しっかり5段ある。
ちょっとづつ夜、子どもたちが寝ている間に出していくわ、と言っていたのに、やりだすと手が止まらなかったらしく、1時間ほどで完成させてしまった。
朝、起き出した娘が飾られた雛人形に気がついて歓声を挙げた。
食い気だけではなかったか。
「○○の雛人形だあ」、とうれしそうに、オルゴールを繰り返し鳴らして悦に入っていた。


[fin]