「怖い」を知る

駆ける



ここのところ、週末を続けて空けていた。今週は久しぶりの週末らしい週末だ。
今日は朝から、娘と「どうする?」と出かける相談をする。
ひつじさんを見に行く、というので、二人で2年ぶりに「のどか村」に行くことにした。


ところが、家を出たとたん、「お砂場セットを持っていく」と言い出し、エレベーターでさらに気が変わって、「お砂がいい」ということになった。
「えー?」と思ったが、まあ、それならそれもいいか、とマンション内の砂場に向かった。
どこかの子が置きっぱなしにしていたプラスチックの器なども使って、「お料理」をあれこれやっては、ベンチのところに運んできてくれる。
30分ほど、そんなことをしていただろうか。気が済んだのか、「じゃあ、次はひつじさんの公園に行こうか」、と言う。
なるほど。子どもの中で時間がどんな風に流れているのか、ちょっと垣間見たような気がした。


車で約15分。「のどか村」には10時半ごろに着いた。
冬の農業公園は人が少なかろう、と思ったが、そこそこの人出だった。
入場ゲートをくぐってすぐ、喜んで駆け出した途端に娘はアスファルトの起伏に足を取られて転倒した。
膝をすりむいてしまい、ちょっとだけべそをかく。受付に引き返すと、親切に消毒してくれた。絆創膏を貼ってもらって、ふたたび意気揚々と公園に入った。


芝生の広場が気持ちいい。私としては全くうれしくないのだが、ちょっとした遊園地のように、電動の遊具を集めた一角があって、案の定、娘はそこに惹かれてしまう。
ひとつだけ、と約束して、てんとうむしの形をしたメリーゴーランドに乗せた。
芝生の上にぽんと設置してあって、おじさんが現金を受け取ってスイッチを入れる様は、サーカスに伴ってやってくる、移動遊園地のような趣だ。
音楽が流れて、てんとうむしの形をした乗り物が上下しながらぐるぐる回る。


降りた後、もっとのるー、とほかのを指差して駄々コネモードになってしまったけれど、構わずさっと担ぎ上げて芝生広場の向こうにある温室まで、だだっと走った。
温室の前には、小さなクジャクバトのケージがある。白い静かな鳥の様を一緒に見ながら諭すと、娘はやっと落ち着いた。
その後、谷を降りて、羊とヤギがいるところに行ってみた。2年前と変わらない、人懐こくて大人しい羊たちだったが、娘の方は2年前と違い、怖がって近づけなかった。
そういう年齢になったのだ。


さらに谷を降りて、古い遊具やアスレチックで遊んだ。
今は安全上の見地から、決して公園に設置されることのない、鉄製の回転遊具や箱型ブランコがあった。
娘は、動きこそ慎重なものの、波型の雲悌を上から渡ってみたり、背丈より高い位置の鎖にぶら下がろうとしたりと、よほどこちらの方が見ていてドキドキする。でも、そういうのは平気らしい。
帰りには、ウサギやニワトリがたくさんいる小屋を見に行ったが、こちらは大丈夫だった。


お昼過ぎ、帰りの車中では、眠りそうになる娘をたびたび驚かせて起こし、あははと笑いながらの運転となった。


[fin]