第二弾のジュニア育成合宿

雪の藤枝射場



朝、6時半に外の駐車場に集合して、今回の合宿は始まった。
12月のメンバーに、昨年の世界選手権ジュニア代表選考会の50m種目で目を惹いた若手3名を加えた14名。


今回の合宿の特徴は、前回同様に年齢や所属母体が多彩であることに加えて、国立スポーツ科学センターに作成を依頼をした食事メニューに沿って、きちんと三食を管理していること、宿から射場まで、宿舎のバス1台を使って上り下りすること、など「合宿」の基本部分をきっちり整えたことにある。


ジュニアだからできること、というのは少なくない。
これまでもこれからも「マイナー」であることを前提に強化をしていかなければならないわけだが、集まってくる選手たちは、その世代のトップとはいえ、サッカーや陸上など、競技人口の多いスポーツのトップ選手とは大きな隔たりがあり、ひ弱で甘い傾向はいかんともしがたい。
それでもしかし、射撃界ではここが一番間口が広く、最もいろいろな人が入っているところなのだ。
ここから先は、就職・結婚・出産はじめ、本人の意欲や技術、才能以外の様々なファクターが、人材を射撃から引き剥がしていく一方である。
そういう「淘汰」を経た後の、さらに上の年齢層を含むメンバーをどうするかというのは、煮詰まったスープの中で格闘するような具合で、結果を出しているんだからいいものである、という前提に乗っかった上でどう機嫌よくやらせるか、みたいな部分が結構あるような感じがしている。


他との比較では貧相ではあっても、自らの領分の中では最も豊かな部分から力強いものへ変えていく、というのはかなり意味のある仕事だろうと思っている。
実は今回のような形で、「食」を根拠に基づいて整えたり、トレーニングはもちろん、その他の移動などの部分をすっきり一本化して参加者全体を「チーム」として意識させたり、というような合宿スタイルは、ナショナルチームでも久しく取られていない。少なくとも国立スポーツ科学センターと組んで食事管理する、という取り組みが、射撃界では初めてだというから、まだ私たちの周りはフロンティアだらけである。
こういうことは、学生連盟のスタッフでもあり、形ばかりとはいえナショナルチームコーチに名前があって、ジュニアコーチのSさんと組んでいろいろなことができるという、今の間しかできないことのひとつなのだろう。そんなことを思うから、Sさんとの射撃の仕事はできるだけ手伝うつもりでいる。ちょろちょろと相談に乗ったり、技術面のサポートで選手たちをSさんの取り組みに手繰り寄せたりするのが、私の役割である。


今回の合宿もワークシートをいくつか用意して、考えさせたり作業させる部分を設けながら、射撃に対峙させるようにした。
ひとつは、「何を練習するのかあらかじめ考える」、「終わった後にそれを評価する」、ということを具体的にはどうするのか、選手の実態に応じて教えること。
もうひとつは、高校なり大学なり日本なりの競技環境について、所与のものとして現状分析する力と同時に、環境を構成する主体として役割を果たす力の二つが大切だと気付かせ、考えさせること、だ。


朝一番にはメニューと前日の評価を書かせ、練習前に説明させた。その内容によっては、練習中の選手にタイミングを見計らってアドバイスしたり指導したりする。
12月には、ちょこちょこ投げかけるだけにしていた高校生にも、少し話をしてみた。男の子たちは、なんというか、ちょっと目を覆いたくなるような感じのところがたくさんあったのだけれど、今回の合宿の間に練習の様子がぐっと変わって、ずいぶんよくなった気がする。
環境について考えさせるワークでは、パーソナルシートの記入とグループワークを経て、お互いの射撃環境について、驚きを持ってお互いに情報交換をする姿や、彼らなりの現状への問題意識や提言を引き出せた。


そのような改まった達成云々以前に、Sさんともどもこけそうになるような情けない現状も、いろいろ見えて、まだまだだとも痛感したが、ひとまず手応えのある合宿になりそうである。


しかしまあ、選手たちの食べ物の好き嫌いの多いこと。
高校生については、3人の先生に指導者としてついてきてもらっているが、野菜をことごとく食べれない選手たちに張りついてもらって、すっかりその辺を克服させることができたのが、今回の一番の収穫だったかもしれない。メニューの説得力と、まだ高校生であるからできたことである。
高校生が食べられるようになると、大学生の方も、がんばって食べざるを得なくなった。
やれやれ。

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