動物園に行きたくなったけど…

はーい!



3月までの3ヶ月は、意外に射撃に関する外出が多く、週末はかなりずっと忙しい。
2週続けて週末を家で過ごせるのは、今週・来週だけである。
来週は、息子のお宮参りをすることにした。


今日は久しぶりに娘と、朝から散歩に出かけよう、と約束する。
生憎の小雨模様だったが、これはこれでいいじゃない、と娘のたっての希望で、二人レインコートを着込んで近くの公園まで機関車を見に行く。


足取り確かに陸橋へと進む。
花屋の前の石のトンボの像ではお約束どおりまたがってポーズをとり、陸橋に着いたら歌を歌いながら階段を下りる。


機関車の置いてある大屋根まで来ると、「はーいって手を振るから、パパはここで待っててね」、と先にずんずん運転席へと登っていってしまった。
どれどれ、と外で待っていると、座席の上に無事登れたらしく、窓から顔を出して、手を振ってくれた。
来てもいい、というので、私も運転台に上がり、娘の様子を見守った。


まあ、メカ好きは相変わらずである。
ノブやハンドルのような部品は次々と動かし、蓋になっている部分は、開けて中を確かめようとする。うまくできないときは、手伝わされる。


そうこうしているうちに、すぐ横を通り過ぎる数々の列車を見つめながら、「動物園に行きたいなあ、電車好きやから、電車でパパといこっか」という。
「え、今から?」と尋ねると、「うん。ぞうさんやきりんさん見たいなあ。」とのこと。
時計を睨めば、30分ちょっとで行けるわけで、昼食や昼寝の段取りまで考えるとまったく行けないわけではない。
どのくらい行きたいと思ってるのか、というところだけが問題かな、と思って、家に電話して、娘自身で相方に説明させてみた。
電話口の向こうで、相方はびっくりしていたけれど、まあ、家に一旦準備をしに帰ってみて、気持ちが変わらないようなら二人で行ってみたら?ということになった。


さあて、どのくらい思ってるのかな、と公園からの帰りの様子を見ていた。
いつもは、道草しながらのんびり歩くところを、「動物園。動物園。」と言いながら、たったった、と帰っていく。
ほー、と感心しながら戻る。
家に着くと、相方と無言で「どうする?」、「どうする?」という感じで娘の様子を見ていたが、「早く行こう」と、上着を脱ぐのも嫌がるような具合だったので、簡単なお弁当の用意をして出かける用意をはじめた。


と、履きなれない靴下をはいていて滑ったらしく、フローリングでぼてっと顔からこけた。
下唇に前歯が当たったらしく、ぽたぽたと血が出て、大泣きすることになった。
たいした傷ではないとすぐわかったので、小さな保冷材とタオルを当てて落ち着かせる。


「動物園、どうする?」とたずねると、「やめとく・・・」、と小さな声で言った。
気持ちをくじかれた様子はかわいそうだったけれど、少しほっともした。
「また、元気なときに一緒に行こうね」と話す。


朝にしていたもうひとつの約束、「ジュースをつくる」を楽しみに、午後は過ごす。
りんごとみかんと、(ヨーグルトがなかったので)たくさんめに絞ったレモンと牛乳をミキサーにかけるだけのジュースだけれど、皮むきを一緒にやって、スイッチを押してもらって、楽しく作った。


「ちょっとくちびるいたいなあ」
と言いながらも、大満足の娘だった。


[fin]


(後日談。この後、夕方になると、「あ、動物園忘れてた。パパといかなあかんな」、「明日保育園の帰りにいこっかー」と、たびたび娘に言われる。その言葉の通りに、ぱっと仕事を休んで行きたい、そんな日もまれにはあっていいのに、と思ったりする。けど、今の職場の状況は、どう融通をつけようにも私の周辺ではとてもそんなことはできないような状態である・・・。もうちょっとだけ何とかならんものかな。)