ジュニア育成合宿

合宿風景



昨日今日と、国立スポーツ科学センター(JISS)へジュニア育成合宿の指導に来ている。
ジュニアカテゴリーの強化であるが、その範囲が高校2年生から大学2年生にわたっているため、集まった9名は多彩である。


大学2年生の3人のうち二人は、ロンドンプロジェクトと銘打った学生連盟の強化事業で2年間一緒にやってきたIくん、Tくん。もう一人のIさんもそうだが、彼らは私がはじめて本格的な高校生の選抜合宿に招かれて指導したときのメンバーである。この学年の選手たちは、私にとって特別に印象深い。今ではそれぞれに、全国の有力な大学射撃部の主力としてがんばっている。
高校生は、ほとんどがすでにアジア選手権や日韓学生対抗戦などで日の丸を背負ったことのある子達であり、3年生は全員がすでにスポーツ選抜で射撃部のある大学に進学が決まっている。


射座が5つで、半分は後ろで待機する格好になる。
2グループに分けて、待機組には、撃っている射手を観察するワークシートに取り組ませたり、射手用のストレッチ・プログラムを提示してその内容を確かめさせたり、新しいアンチドーピングリストをチェックさせたりした。
私自身も、各選手のパフォーマンスを観察した。合間合間に質問をして観察したことと本人の感覚や考え方を探る。


IくんやTくんについては、もう技術の話しをする土台がある程度共有できているから、ぽんぽん指摘もできるし注文も出せる。Iさんについても、同じような感じであるが、他の高校生たちについては、わかったこと、気になったことをどう伝えるか、さらには今回伝えるべきかどうか、ということまでかなり気を遣う。
現在の高校生の中では頂点に近いところにいるとは言っても、技術的には驚くほど幼いことはさして珍しいことではない。しかし、「こうしたら?」とすぐ言いたくなるのをぐっとこらえないといけない。
致命的な悪癖に繋がりそうなものだけを見極めて除いたら、調子に乗せられるだけ乗せて、本人が「あれ?」と思うまで待った方がいい。「あれ?」と思う「芽」がないところにアドバイスをしてもいいことはない。今回の場合は特に、いろいろな「代表」を張って実績も出してきた子らである。本人が違和感を感じていないところへ、ああだこうだと言って、「教わる」ことのできない選手にしてしまうのが一番怖い。
いかに自然に「あれ?」と思わせられるか、というのは教える側の最も大事な技術のひとつだと思う。


今回の選手には「いけいけどんどん」でもう少し様子を見ることにした子もいれば、「あれ?」と思ってくれて具体的に修正を試みて、見事に結果を出した子もいた。そのまましっかりやるだけで凄いものになりそうなのに、なかなか確信が持てなくてあれこれ考えてしまい、こちらから「褒めて」「励まして」と、働きかけなければならない子もいた。


合宿自体は一昨日から始まっていて、その夜にも、選手強化の副委員長からすでに講話があったらしい。
よく知っているメンバーと今回がはじめてのメンバーが混在しているので、昨晩の講義では何を話したものか少し悩んだ。
おおまかにはいつものように、JOCジュニアコーチであるSさんが展望や方向性、情勢についての話、私はテクニカルなこと、という分担だ。結局、定番にしている技術論の導入のところを、問答中心にやることにした。
やってみると思いもかけない珍答続出で、引率に来ている顧問の先生たちは苦笑していた。考えはじめるきっかけにしてもらえそうな、いい機会になった感じがする。


まだ目新しい感じのする「シュートオフ」を使った、敗者復活つきの尻尾切りトーナメントゲームで、今日、合宿を打ち上げた。


私の話を聞きたくて、この合宿には来たんだ、と言ってくださる高校の先生がいて、うれしい一方、身の引き締まる思いもした。
まだ2月と3月に、さらに50mの選手を数名加えて、第2次、第3次の合宿をするという。
さて、次はどうしたものか。ひとつ済んでも、なかなかほっとはさせてもらえない。


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