コーチ業

練習風景



ようやくたどり着いた、という感のある週末だったが、時間が見つかると、放置状態になっている「コーチ業」が気になって、選手に連絡を取ってみた。


2年計画のロンドンプロジェクトは最終段階を迎えている。
国際標準に届く選手を、学生連盟が積極的に関わって計画的に育成支援する、という試みは、対象選手が日本選手権で上位を占め、ナショナルチーム選考会にも駒を進めることができたことで、十分に成果といえるものを挙げることができた。
もちろん選考会を使って有望な選手を選んでいるわけだが、継続的な支援がなければ彼らは「学生としてはいい選手」の一群にまぎれてしまったのではないか、という気が(若干は手前味噌ながら、かなりはっきりと)する。


私は、「オフ」にせざるを得なくなったが、担当しているTくんにとっては、先週インカレを終え、来週はいよいよナショナルチーム選考会、その翌週が同様に選考会を兼ねた日本選手権、と今シーズンのクライマックスになっている。関東組は、この土日は最後の強化合宿を張ることになっている。Tくんは、またまた少し調子を崩し気味でインカレは随分と振るわない点数だった。話を聞いたところでは、「重心が降りない感じでふわふわするのだ」とのこと。


土曜日は学校の練習はないです、と言うので、能勢へ連れて行って練習を見ることにした。


大事な大会前にあまりいろいろなことを言って混乱しては元も子もないので、助言はピンポイントに、しかもなるほど、これはできそう、というものにしないといけない。
身体をほぐさせて、撃つ様子をじっくり見る。核心を見出して「えいっ」とアドバイスしなくてはならないから、見るこちらも緊張する。


しかし、構えの様子をしばらく観察したら、彼の訴える症状と一致する問題点は、すぐに見つかった。
バランスを取って立つときに、どうもポイントとする位置が鳩尾の近くぐらいまで上がってしまっているのだ。
症状に関して、私の見立てと一致するかどうか確かめる質問をいくつかしてみると、その通りだった。注意を向けるポイントを修正するよう助言して、触れてその位置を確認させると、「あ、治りました」となった。
ああ、よかった。あとは、時間を区切って気分よくバンバン撃ってもらうだけである。


私は久しぶりに、M601を引っ張り出して持って行ったので、撃てる状態にセッティングを直しながらTくんの後ろで構えてみたりした。
弾出しも試みた。
しかし、持って行ったフロントのグローブが601よりも前のモデルのハイサイトで、リア用に持って行ったのが高い方のハイサイトブロックだけだったため、フロントの高さが足りなかった。黒点の少し上までしかサイトを合わせられず、残念ながら撃つことができなかった。手入れがよかったのか、メカの調子はすこぶる良く、サイトさえ合えば、問題なく撃てそうだったので、少し残念だった。
ポンピングの動作は、数度するだけで10年前までの射撃にまつわるできごとをいろいろ思い出させてくれた。


さて。あとは来週、再来週のTくんの活躍を祈るばかりである。


[fin]