ISSF NEWS2010:4

ISSF NEWS 4:2010



国体もとうとう最終日。今日は、ただ表彰式を待つ一日となる。
ようやく空が晴れ渡り、暖かい日が差した。
すっかり荷物も人も減ってしまった、更衣室兼荷物置き場となっている柔道場の一隅に座り込み、ISSFNEWS2010:4を片付けてしまうことにした。


今号は、8月の23日に届いていた。
パラパラと目を通したのは今月半ば。1ヶ月近くも放っておいたことになる。
今年はここまで、国際的には第50回世界選手権を最大の関心事にして過ごしてきた。
その世界選手権が終わってから届いたものだから、「早い!表紙は松田さんか!」と手に取ったのだが、内容は直前情報の特集だった。
・・・ということで、「なあんだ。」と落胆したのが、紹介の遅れた理由である(まあ・・・体調も悪く、射撃も含め自分のことで手いっぱいだったのが一番の理由であるが)。


これを手に会場をうろうろしたり、成績を見たりすれば、随分奥行き深く、世界選手権を楽しめたろう、と思う。
会場の入り口でパンフレット代わりに配られたり・・・はしていないんだろうなあ。


ISSF NEWS 4:2010

COVER PAGE

地元ベオグラードのワールドカップを制し、男子10mピストルのランキング1位に浮上したダミール・ミケ(Damir Mikec:セルビア)26歳。
2010年のワールドカップシーズンにおいて、出場8試合のうち7大会でファイナルに進出。5月のフォートベニング大会で初めて金メダルを獲得し、地元大会でも再び2種目でファイナル進出。大勢の観衆から声援を受けて今年のワールドカップ・シーズンを閉じた。2012オリンピックのQP獲得に向けて、直後に迫る世界選手権への準備を進めている、とある。

ISSF ACTIVITIES

Welcome to Munich...


開催を直前にして、ISSFから世界中の射撃関係者に向けた歓迎のメッセージである。
IOC会長のジャック・ロゲ(Jacque ROGGE)を迎えて、ミュンヘンの中心マリエン・プラッツで開会式典が行われることなどが紹介されている。
また、新しいQUOTA(五輪出場権)ルールがいよいよスタートすることにも触れられている。
どの大会でどの種目にいくつ割り当てられるか、等は、今号にも紹介があったが、webサイトで確認できるようになっている。

ROAD TO MUNICH

The Championship Begins


今回の第50回世界選手権開催に当たって、主に「世界選手権」という大会について、様々なデータからくわしく紹介する記事となっている。
大会の規模が最大であることのほか、ISSF TVによって本格的に中継が行われ世界中に配信される点や、大会会場への入場券の販売、各種目ごとにVIPシートの設定をしてチケット販売を行う点など、今大会を機に、イベントとして大きな変化を遂げようとしていることが強調されている。


1898年の第1回大会以来の、開催国や会場の変遷、全大会のメダル獲得上位3国のリスト、歴代国別メダル獲得数リスト、レジェンドとなっている過去の偉大な射手の紹介など、競技射撃史の入門として面白い。
これまで圧倒的にイタリアでの開催が多く、世界選手権で団体戦が行われるようになった1987年以降、団体メダル数ではスイスが他を圧倒していることなどを私は知らず、意外に思った。


野球においては、イチロー選手が大リーグの草創期の様々な記録を掘り起こして、私たちの目の前にそれらを明らかにしてくれているが、その時に「当時の野球の姿」も浮かび上がらせてくれている。そこでは「野球それ自体」の歴史の奥深さを感じさせられるわけだが、射撃における「レジェンド」も同様の驚きを伴うものである。
1898年から1914年の間に世界選手権で44のメダルを獲得したコンラッド・ステーヘリ(Konrad STAEHELI:スイス)。ライフルとピストルの両方で活躍し、ライフルの世界記録を12、ピストルの世界記録を5樹立。1900年から1925年にはポール・ヴァン・アズブロック(Paul Van ASBROECK:ベルギー)が世界選手権のライフル競技で10のメダルを獲得して世界記録1、ピストル競技でも10のメダルを獲得して世界記録3。黎明期には、その時ならではのすごい人たちが、やはりいる。


歴代国別メダル獲得数は、日本は金がゼロとなっている(銀5・銅3)。今回松田さんが2つ獲得して、57位から39位へ一気に歴代ランキングを押し上げたことになる。
また、1大会で複数の金メダル獲得というのは歴代にも滅多にないことで、この記事でも1970年にマーガレット・マードック(Magaret Murdock:アメリカ)が2種目制したことが写真入りで掲載されているくらいであるから、その成績の偉大さがわかるというものである。


また、2006年から2010年の間全体で見た、各種目のランキングが載っている。現在のISSFランキングとは違って、この4年間で誰が一番強いのか、というのがよくわかって面白い。
50m伏射で山下選手、50mピストルで松田選手、25mラピッドで秋山選手、25mピストルで福島選手がベスト15に顔を出している。

COMPETITION

ISSF World Cup in Lonato


イタリア・ロナート(Lonato)で開催されたショットガンのワールドカップ報告。
9月にイスタンブールで行われるワールドカップファイナルへの出場権争いは、この大会で決着がつく。北イタリアはガルーダ湖の辺にある射撃場はこれまでも数多くのワールドカップ大会が開催されてきた会場のようである。金メダルは5国に1つずつ行き渡り、金銀銅各1を獲得した地元イタリアが、中国とアメリカを抑えて最多獲得国となっている。

ISSF World Cup in Belgrade


今シーズンライフル・ピストルのワールドカップとしては4戦目に当たるベオグラード大会は、世界選手権前の絶好のテストマッチとなった。
中国が世界選手権に備えて主力を帰国させ、初出場の若手中心の編成でこの大会に臨んだり、ロシア勢の不振もあって、ここ最近のワールドカップの傾向とは異なるメダル分布となった(それでも、中国はきわめて金に近い銀を、10代の若手で2つ獲得している)。
フランスが新星の登場で金メダルを2つ獲得して国別メダル獲得数で1位に、同じく金2つを獲得したイタリアがアメリカと並んで2位と、2年ぶりにトップ3に食い込んだ。
様々な種目に、繰り広げられた戦いの興奮が伝わる記事だった。

  • 男子50mピストル ウクライナのオレグ・オメルチュク(Oleg OMELCHUK)が1位、2位にパボル・コップ(Pavo KOPP:SVK)、3位ウラジミール・イサコフ(Vladimir ISAKOV:RUS)。しかし、上位のメダル争いとは別に、COVER PAGEの記事にもあるとおり、この大会は地元ベオグラードのダミール・ミケ(Damir Mikec:SER)への声援が熱かったようだ。ミケはこの種目7位に終わったものの、その戦いぶりが10mピストルでのそれとあわせて、観衆に強い印象を残したとある。
  • 男子10mピストル イタリアの25歳、マウロ・バダラッチ(Mauro BADARACCHI)が、ファイナルで少ししょっぱい射撃をしつつも0.2点差でシドニー五輪金メダリストで日本にもなじみの深いフランク・デュモラン(Franck DUMOULIN:FRA)の追撃をかわして2年ぶりの金メダルを獲得した。デュモランはファイナルで最高点を撃って3位から首位に肉薄した。最終弾でデュモランに逆転を許したが、3位にはロシアのウラジミール・イサコフ(Vladimir ISAKOV)が入った。ここま3大会でメダル3つを獲得してきたアメリカのダリル・ザレンスキー(Daryl SZARENSKI)は惜しくも4位。地元ダミール・ミケ(Damir Mikec:SER)が5位に入った。
  • 男子10mエアライフル フォートベニング大会で50m伏射で驚きの初優勝、50m三姿勢では最終弾に失敗して3位に転落、と一気に注目射手となったイタリアの若きエース、ニコロ・カンプリアーニ(Niccolo CAMPRIANI)がこの種目初の優勝を飾った。3位でファイナルをスタートしたニコロは徐々に上位と点数を縮め、最終弾で10.6を撃って鮮やかに優勝を決めた。ファイナルの最初から最終弾のことをずっと考えていたという。最終弾が結果を左右する場面が現れ、なんとかコントロールして撃てたことを喜ぶコメントが書かれている。ニッコロに0.5点差及ばず2位となったのが中国の16歳ガオ・チンジ(GAO Ting Jie)。598で予選を1位通過、ファイナル102.7は決して悪くない。表舞台に現れていない強い選手がいかにたくさん控えているかがよく伺えるガオの活躍である。3位には北京のワールドカップで初優勝して初めて脚光を浴びたロシアのデニス・ソコロフ(Denis SOKOLOV)が入った。6位からセルゲイ・リヒター(Sergy RICHTER:ISR)やペーター・ヘレンブランド(Peter HELLENBRAND:NER)、ナラン・ガガン(Narang GAGAN:IND)など錚々たる顔ぶれを逆転しての銅である。ソコロフの活躍は、一度勝つと一皮剥けるということをよく表しているようにみえる。
  • 女子10mピストル フランスに新星の誕生である。23歳のセリーヌ・ゴベルビーユ(Celine GOBERVILLE)。これまでISSFのメダルを1つも獲得したことのない彼女は、4位でファイナルに進出すると、101.5を撃って1位のアテネ五輪の金メダリスト、オレーナ・コステビック(Olena KOSTEVYCH:UKR)を見る見る追い抜き初優勝を飾った。2006年のシーズン以来幾度かファイナルに進出するも表彰台に縁がなかったが、ついに金メダルでこの壁を突破した。オレーナはファイナルで98.3だったが二人にかわされて3位。2位に入ったブルガリアのアントアネータ・ボネバ(Antoaneta BONEVA)も初のメダル。
  • 女子25mピストル 10mピストルで初のメダルを獲得したばかりのセリーヌ・ゴベルビーユ(Celine GOBERVILLE:FRA)が再び大活躍。ブレークするときとはこういうものか。優勝はフォートベニング大会で復活を果たした、オリンピック連覇の実績があるマリア・グロズデヴァ(Maria GROZDEVA:BUR)。ゴベルビーユはこれにわずかに0.1点差に迫る2位だった。3位はニーノ・サルバッツェ(Nino SALUKVADZE:GEO)。
  • 男子25mラピッドファイアピストル ここでもフランスの新星が現れた。23歳のファブリス・デュマ(Fabrice DAUMAL)。本戦トップのマーティン・ストゥルナッド(Martin STRNAD:CZE)を逆転、北京五輪銅メダリスト、クリスチャン・レイツ(Christian REITZ:GER)を振り切ってのISSF主催試合初優勝となった。これまで、15位以上になったことがなく、ランキングも43位だった選手の大躍進である。2位はクリスチャン・レイツ(Christian REITZ:GER)、3位はマーティン・ストゥルナッド(Martin STRNAD:CZE)をシュートオフで下した同じくチェコのヨセフ・フィアラ(Josef FIALA)だった。
  • 女子10mエアライフル 昨シーズンこの種目を圧倒的に制したドイツのソーニャ・フェイルシフターが2度目の400点満射で本戦圧巻の1位通過。決勝も103.5と危なげない内容で、普通なら全く付け入る隙なく優勝となるところだった。しかし、今回は398でファイナルに進出したクロアチアのスジェザナ・ペジック(Snjezana PEJCIC)が一世一代の猛追を見せ、ファイナルで105.5を撃ち最終弾で同点に並んでしまった。緊迫のシュートオフ、ペジックは文句のない10.4、しかしフェイルシフターは10.5を撃ち抜き、激戦に決着がついた。地元開催の世界選手権を間近にしてようやく主役が帰ってきた観がある。3位には22歳のドイツの新鋭ジェシカ・マゲール(Jessica MAGER)、4位にもドイツのベアテガウス(Beate GAUSS)と、ドイツの強さが目に付く試合であった。
  • 女子50m三姿勢 ファイナルには3名のドイツ勢が進出し、10mに続いて圧倒的な層の厚さを示したが、優勝したのは本戦4点のアドバンテージを生かしたカザフスタンのベテラン、オルガ・ドヴガン(Olga DOVGUN)だった。2位は中国から今回初めて国際大会に出場したドン・リジエ(DONG Lijie)。弱冠19歳の新鋭である。本戦でドヴガンと6点差がありながら0.2点差まで肉薄する底力を示した。中国は空恐ろしい層の厚さである。3位には10mのファイナルで驚異的な追い上げでフェイルシフターを追い詰めたクロアチアのスジェザナ・ペジック(Snjezana PEJCIC)が入った。
  • 男子50m伏射 アメリカの二人、マイケル・マクフェイル(Michael MCPHAIL)とマシュー・エモンズ(Matthew EMMONS)が599・598の1位・2位でファイナルへ。強風の中、1位と2位がめまぐるしく入れ替わる激戦となった。9発目を終えて二人は同点。最終弾勝負でマイケルは10.4、一方のエモンズは9.0を撃ってしまい一気に4位に転落した。めちゃくちゃ強いのに、どうしてもこういうドラマの付きまとう人である。2位には最終弾を10.8で締めたイスラエルのギュイ・スターリック(Guy STARIK)、3位にはオーストリアのクリスチャン・プラナー(Christian PLANER)が入った。
  • 男子50m三姿勢 エモンズ(Matthew EMMONS:USA)の圧勝だった。今年この種目3連勝。出場したワールドカップ全てで優勝である。今回も伏射397、立射390、膝射394と文句のない内容。ファイナルも強風の下97.4だった。2位には40歳になったロシアのアルテム・ハジベコフ(Artem KHADJIBEKOV)が健在ぶりを示した。3位はこの種目ランキング2位のマリオ・ノーグラー(Mario KNOEGLER:AUT)。

LONDON2012

Quota Rule for the 2012 London Olympic Games


2012ロンドン五輪への出場資格配分システムについての記事。
世界選手権と2011年のワールドカップ、2010・2011・2012年の大陸選手権に、QPを配分する計画表とその適用・運用ルールについての資料。
詳しくはissf.orgで確認できる。

DOPING

The ISSF IPOD - The "information portal on doping"


今回は、ドーピング教育の重要性についての記事である。
各競技団体に課されている、ドーピング教育を行う義務とISSFの具体的な取り組みが紹介されている。教育ブースで行われているアンチドーピングクイズから、10問が紹介されている。

YOUTH OLYMPICS

It's the Time for Youth


8月14日から第1回大会が行われる、「新しいオリンピック」ユース・オリンピックについての直前記事。


ユースオリンピックについてはあまり知られていないが、単に若い年代の選手だけを集めて国際競技会をする、というのではなく、次世代をになう若手アスリートにオリンピックムーブメントの理念に基づく教育を行うことを主眼としている。そのため、競技会よりも大会期間の教育プログラムに重点が置かれ、それらに全日程参加することが選手には課せられている。
参加者が世界全体に行き渡るよう、この大会のQPは2009・2010シーズンの各大陸の選手権(オセアニア選手権・アジア選手権ヨーロッパ選手権・アフリカ選手権・アメリカ選手権)のジュニア種目で配分が行われた(日本は残念ながら、ドーハでのアジア選手権でQPを逃し、この第1回大会に参加できない)。
教育プログラムでは、アスリート・ロール・モデル・プログラムというものが行われるが、ここでは各競技種目から40名の「ロール・モデル」が選ばれて、参加選手への教育を担当する。射撃からはマシュー・エモンズ(Matthew EMMONS:USA)がロール・モデルに選ばれた。記事の中でエモンズが抱負を述べている。

NEWS

・・・ではないのだけれど、LAPUAの広告ページとして、フィンランドで行われる国際トレーニングキャンプを紹介するページがあって、気になった。
今年2010年の12月12日から17日の日程で、フィンランド・クオルタン(Kuortane)にあるISSF公認クオルタン・ハイパフォーマンス・トレーニングセンターにおいておこなわれるというもの。
国際大会にすでに出場している射手も含む、それらを目指す射手を対象としており、コーチも共に参加することを歓迎している。
参加者のレベルに応じてトレーニングを計画し、必要なものはこちらで用意・提供する、とある。


目を惹いたのは、指導するのがヨセフ・ゴンチ(Jozaf GONCI)とキモ・イリ・ヤスカリ(Kimmo YLI-JASKARI)、というところ。
参加費用は、875ユーロ(10万円弱か)。到着してから支払えばいいようだ。詳しくは、www.kuortane.com。


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