一転して快晴の開会式

ブルーインパルス



この国体は大会直前の週間予報によると、急激に気温が下がり期間のほとんどが雨か曇り、と言われていた。
ここ数日は、開会式のある25日の午前中には房総沖に台風が最接近する、という予報になっていて、これは雨の中の大変な開会式になるのだろうな、と少し憂鬱に思っていた。チームでは、ひょっとすると開会式自体が開催できないのではないか、という声もあった。


昨年はスタンドで見守る開会式だったが、今年は、選手団の中でライフル射撃競技は行進する側の競技に当たっている。
これまで幾度か雨の開会式は経験がある。開会式は大体、メイン会場となる競技場の横にあるサブグラウンドのようなところが待機場所に充てられ、選手入場前に行われるセレモニーやエキシビジョンが終わるまで、そこでじっと待つことになるのだが、屋根のないところで薄い雨合羽をかぶって寒さに震えながら待つのはなかなか大変であった。翌日にすぐ試合があるので、余り荒れると堪える。
今回は、メイン会場が千葉マリンスタジアム、待機場所が幕張メッセ、ということで待機場所が豪勢に屋根のあるところなので待つのには不安がないと見た。行進のときだけ雨に打たれることを覚悟する。


生憎、朝起きてみると風もきつく、横殴りの雨だった。
6時ごろに大会ホームページで発表されることになっている、開会式の有無についての連絡を見に行くと、「予定通り実施」となっていた。
ものすごい規模のイベントなので、余程のことがないと中止はないだろうと思っていたが、正直なところ「大変だな」、と思った。


9時過ぎに宿の前からバスに乗り込むころには、少しおとなしい雨になっていた。
例年、宿泊エリア単位で用意される計画輸送バスで入場のだいたい4−5時間前には会場に運ばれて、各府県のチーム内の点呼や打ち合わせ、現地激励会、行進の説明などが時間までぽつぽつと行われるスケジュールになっている。
今年もその通りで、ポコンとできる1時間程度の合間に昼食を取ったり、みやげ物売り場を縫って歩いたりする。


「おもてなしゾーン」と称された、売店の入ったテントの立ち並ぶエリアは、スポーツショップや地元の特産品を扱う店のほか、市町村のPRをする出張ブースや企業が協賛するブース、ブルーインパルスを中心に自衛隊のPRをするブースなど、例年以上に多彩で豊富な内容だった。
競技会場ではすぐになくなってしまうマスコットのぬいぐるみと、半分は袋を目当てでTシャツを買う。例年と変わりない。
久しぶりに代表に復帰したIさんも、こういうところでの振る舞いは慣れたもので、ささっと目当てのもを買って一回りすると、サザエの壷焼きなんか買ってきてテントでくつろいでいる。私もひとつ分けていただいて頬張りながら、青空が出たり小雨がぱらついたりする空模様をぼんやり眺めた。


メッセで一度選手団の集合があった後は、弁当を食べながら、整列の集合時刻を待った。
中継車の画面には、すでに始まっている開会式典が映し出されている。テリー伊藤小野真弓、地元FM局のDJらしい3氏が進行をしている。


整列ができてから、都道府県順に長い列を作ってスタジアムへ移動するまで、大体1時間かかった。
メッセを出ると、すっかり空は晴れ渡っていた。数時間前までのぐずついた天気が嘘のようだった。
マリンスタジアムのすぐ外に広がる海がところどころエメラルドグリーンに白濁していた。
一見美しく見えたのだけれど、後で聞くところによるとこれは「青潮」で、強風によって酸素飽和度の低い海底で死滅した微生物を大量に含む海水が大量に海面に上がってくる現象なのだそうだ。
中の喧騒を壁越しに聞きながら、スタジアムを取り囲むようにして選手の列は出番を待つ。


これまで数多くの開会式に出てきたが、野球のスタジアムは初めてだ。
式典の出番を終えた、いろいろな年齢層の大演技団が次々と賑やかに横を通っていく。
ブルーインパルスの編隊が轟音と共に空を一閃すると、いよいよ順番が回ってきた。入場行進はレフト側からホームを回ってライト側へと進む。ネットが除かれたホーム付近が正面で、その真後ろ上方に両陛下の席、マウンド周辺に大きな炬火台が設けられ、スタジアムは大きな円形競技場のように設えられていた。レフトのラッキーゾーンに当たる部分で大演奏団が熱演を繰り広げている。
ちょっと音響がよくなくて、森喜朗森田健作文部科学大臣などによる挨拶やアナウンスなどはほとんど聞き取れなかった。「おことば」が数年前からなくなってしまったのは、そこでしか味わえない独特の緊張感がひとつ失われてしまったようで残念である。
しかし心配された足元はすっかり落ち着いており、晴れ渡る空の下、秋らしい涼しい風が流れる素晴らしい開会式だった。


さて、明日はいきなり3連覇のかかる大一番である。
最近あまりなかったことであるが、前日からどうにも落ち着かないような緊張感がある。
寝られないほどではないので、準備ができたらさっさと寝よう。


[fin]