ISSF NEWS 2010_3

ISSF NEWS 2010_3



今回は12日に届いた。
なかなか封を切ることもできず、郵便物の山の上にぽんと置きっぱなしになっていた。
世界選手権が始まるまでには目を通しておかないと、と広げてみた。


ISSF NEWS 2:2010

COVER PAGE


ドーセット(Dorset)とロナート(Lonato)のワールドカップでスキート種目を制した、ジョルジョ・アキエロ(Georgios ACHIELLEOS:キプロス)。
ミュンヘンの世界選手権に備えて、今年はエネルギーを貯めておきたい、と参加を2大会に絞り、その両方で優勝した。
すでに1999年と2007年に2度世界を制しているが、ミュンヘンは世界の強豪がひしめくタフな大会となる。
大きな手応えを感じてこれに臨むはずだ。

ISSF ACTIVITIES

ISSF WORLD CHAMPIONSHIP - MEETINGS

7月30日に開会式をミュンヘンのセントラルスクエアで行い、いよいよ史上最大の参加者で行われる第50回世界射撃選手権大会は開幕する。
それに先立ち、7月25日に役員会、7月26日に運営会議、7月28・29日には総会が開催される。何か重大な議論が予定されているわけではないが、次の4年間を担う役員を選挙で決定することになっている。

ISSF WORLD CUP SERIES 2010

オーストラリア・アジアに続く、イギリス・ドーセットでの初めてのワールドカップは46カ国349人の参加選手で無事に行われた。このショットガンの大会は、2012年のオリンピックリハーサルを兼ねていた。
アメリカ・フォートベニングのワールドカップは53カ国696名の参加であった。
76カ国569名を集めた、イタリア・ロナートのワールドカップ・ショットガン大会はつい先日終わったところである。
QPの分配がないため心配したが、これだけの参加者数を得られたことに驚きを感じている。来たる、セルビアベオグラードでのワールドカップについては、すでに59カ国1013名のエントリーを受けており、盛大な大会となるであろう、とのことである。

ISSF ATHLETES COMMITTEE

各国の協会に、選手会のメンバーとなる選手の立候補を呼びかけている。
近年は、選手会は大変重要な役割を果たすようになっており、各委員会と選手会の間で意義深い話し合いがいくつも持たれるようになってきている。
立候補期間は5月30日から7月15日。選挙は世界選手権大会中に行われる。選手たちが、票を投じる選択肢が増えるよう、多数の立候補を期待している、とのことである。

PLEASE NOTE

ISSF事務局が、ハッカーが各国協会を似せたアドレスで多数フェイク・メールを送りつけてくる攻撃に悩まされている、とのことである。
協会の連絡先(住所・メールアドレス・電話/FAX番号・担当スタッフの変更など)に変更があった場合は迅速に連絡するように求めている。また、支払いについて困っている場合もヘッドクオーターまで早急に相談をするよう呼びかけている。


ミュンヘンで、お会いしましょう!の一文で今回の記事は締めくくられている。


COMPETITION

ISSF World Cup in Beijing


ライフル・ピストル・ショットガンの全種目に渡り、約600名の参加を得て、北京オリンピック射撃場においてワールドカップが開催された。ショットガンは周囲の丘に守られて風の影響が少ないこと、ライフルはファイナルレンジが世界屈指であることが、会場として優れている点として挙げられている。
大会中に中国北西部の大規模地震が起こり、4月21日が服喪の日となったために大会日程が変更され、試合に参加できなくなる選手が出たり、アイスランドの火山噴火の影響で帰国できない選手役員が出るなど、波乱含みな大会であった。


全種目で中国が他を圧倒。金6銀5銅3の計14のメダルを獲得。第二位のアメリカ(金4銅2・計6)・ドイツ(金2銀2銅2・計6)を大きく引き離した。
以下、私自身の興味の向くままに・・・、

  • 10mS60M、アテネ五輪で金、北京五輪銀のこの種目でランキング1位を維持しているズ・キーナン(ZHU Qinan:中国)がどうしてもこの北京の射撃場で勝てない、今回も701.2(598+103.2)と申し分ない成績であったのに、0.1点差でランキング54位でワールドカップ優勝経験のないデニス・ソコロフ(Denis SOCOLOV:ロシア)に0.1点差で破れ2位、となった。
  • 10mS40Wはウ・リュシ(Wu Liuxi:中国)が自身3度目の400点を撃ち、ファイナル102.7で逃げ切って優勝。しかし、驚異的なのはウに0.1点差に迫ったチームメイトのイ・シーリン(YI Siling:中国)。397のシューティングオフでファイナルに滑り込んだイは、ファイナルで105.6。シューティングオフも52.9。質の高い10点を撃ち続ける技術は相当なもののある20歳である。
  • 50mP60Mは1位と3位がアメリカ(ヨセフ・ハインJoseph HEINとエリック・アプタグラフトEric UPTAGRAFT)。2位はドイツのアンリ・ユンガネル(Henri JUNGHAENEL)だった。ユンガネルは22歳と若い。日本の山下選手が8位。
  • 50m3P60Wは、10mS40Wに続いてウ・リュシ(Wu Liuxi:中国)が制した。ここでもトップはチームメイトとの間で争われ、2位はアテネ五輪銀のワン・チェンギ(WANG Chengyi)。3位にイランのエラ・アーマディ(Elaheh AHMADI)が入った。4位にも中国の新鋭ジェン・フェン(ZHENG Feng)が入っている。
  • 50m3P120Mはドイツの若手、22歳の二人ジュリアン・ジュストゥス(Julian JUATUS)とダニエル・ブロッドメイヤー(Daniel BRODMEIER)が1位と3位。
  • 25mRFPの覇者リ・ユホン(LI Yuehong:中国)は20歳の新鋭。優勝は2大会連続、今後、この種目のスターになっていくのではないか、と目されている。
  • 10mAP60M、50mFP60Mと男子ピストルの精密系2種目はアメリカのダリル・ザレンスキー(Daryl SZARENSKI)が制した。今年のシドニーWCでも3位に入ったザレンスキーは、42歳にして開花、どんどんランキングを上げている。

ISSF World Cup in Dorset


ロンドン五輪会場となる、オリンピックトレーニングセンターを会場に、イギリス初のショットガンのワールドカップが開催された。
中国・ロシアの2国で、メダル全体の半分を獲得している。

ISSF World Cup in Ft.Benning


ライフル・ピストル種目のワールドカップ。フォート・ベニングはここまで、ワールドカップを頻繁に行ってきている会場である。
全体としては、ここでも中国が全体の三分の一にあたる10個のメダル(金3銀3銅4)を獲得し、圧倒的な力を見せた。ホスト国のアメリカ、そしてロシアがそれぞれ6個、5個のメダルを獲得してこれに続いた。イタリアがこれに続いて4位に躍進しているのが特筆すべきところである。22歳のニコロ・カンプリアーニの成長がこれを支えている。

  • 10mS60Mは、ズ・キーナン(ZHU Qinan:中国)が北京の悪夢を払拭する素晴らしいパフォーマンス(703.1=599+104.1)で堂々の金。ワールドカップではこれまで10度の優勝、オリンピックも2004年にアテネで金を獲った彼も、前回の世界選手権は銅。今月末の世界選手権に懸ける思いは強い。2位はワン・タオ(WANG Tao:中国)、3位はセルゲイ・クルコフ(Serguei KURUGLOV)。ロシアと中国が上位3つを占めたのは北京のWCと同じ。トータルで700を超えなければメダルには届かない(超えても届かないことがある)というのも、この2大会を見るだけで、はっきりと表れている。
  • 10mS40Wは、北京WCのシュートオフからファイナルにかけて驚異的な10点の質の高さを見せつけていたイ・シーリン(YI Siling:中国)が、北京で二種目を制したウ・リュシ(Wu Liuxi:中国:500.8=399+101.8))を逆転して優勝した(501.3=398+103.1)。イはファイナルに強い、という意識が、ウを少し追い詰めていた感がある。このファイナルでも10.9を2発撃っており、ウには相当堪えたはずである。3位には初めてファイナルに進出したセルビアアンドレア・アルソヴィック(Andrea ARSOVIC)が入った。
  • 50m3P120Mは、地元のマシュー・エモンズ(Matthew EMMONS)とジェイソン・パーカー(Jason PARKER)が1・2位を占めた。エモンズは、どうしてもファイナルの最終弾が話題に上がる。今回は1178と2位に4点差をつけての決勝で余裕があったにも関わらず、最終弾が8.9だったことをさりげなく記事でも触れられているあたり、結構辛いなあ、と思わされる。エモンズは今シーズンシドニーWCに続く優勝で、磐石の滑り出しである。35歳のパーカーは、数シーズンぶりのワールドカップ復帰で結果を出した。ニッコロ・カンプリアーニ(Niccolo CAMPRIANI)は、エモンズを追い上げて、優勝争いを繰り広げたが、最終弾で痛恨の6.9を撃ち、3位に転落した。エモンズほどには知られていないが、実はニッコロも最終弾に因縁のある選手である。ニッコロはアメリカの射撃の名門、ウェストバージニア大学に留学しており、ここは第二のホームグラウンドである。ともによく知る3人が表彰台を占めたことになる。
  • 50mP60Mは、ニッコロ(Niccolo CAMPRIANI:イタリア)が雪辱(703.2=599+104.2)。本人もびっくりの自己ベストでの優勝だ。それに続く2位にエリック・アプタグラフト(Eric UPTAGRAFFT:アメリカ)、3位にエモンズ(Matthew EMMONS:アメリカ)と、アメリカ勢が占めた。
  • 50m3P60Wは、ここ最近で一気にトップ選手に駆け上がった、ジェイミー・ベイエール(Jamie BEYERLE:アメリカ)が687.7(591+96.7)で堂々の優勝。続く2位には、ここまで今シーズン2大会連続優勝のウ・リュシ(Wu Liuxi:中国)、3位に(前大会惜しくも4位だった)23歳のジェン・フェン(ZHENG Feng:中国)と中国勢が占めた。岩田聖子が、シュートオフから勝ちあがって5位に滑り込む健闘を見せている。
  • ピストル種目男子では、ロシアのエキモフ(Leonid EKIMOV)が50mで優勝、25mラピッドファイアで3位、10mでは惜しくもシュートオフで敗れて9位という活躍を見せているのが目を惹く。超精密系の50mと速射系のラピッドを2日連続で撃って、どちらも世界トップクラスというのは、相当に凄いことではなかろうか。北京で精密系2種目を制した42歳のザレンスキー(Daryl SZARENSKI:アメリカ)は今回も50mで2位に入る活躍を見せている。
  • 女子25mピストルでは、シドニーアテネとオリンピックを連覇したマリア・グロズデヴァ(Maria GROZDEVA:ブルガリア)が久々に優勝している。

ROAD TO MUNICH

The Venue of the Records

間近に迫った世界選手権に向けて、式典や会場についての紹介、これまでの世界選手権の歩みについて記した記事。
最近10回の大会での主な出来事をまとめた表が、足跡を振り返る上でわかりやすく、なかなかいい。

DOPING

The ISSF IPOD - The "information portal on doping"

今回の記事は、WADA(World Anti-Doping Agency)について、その歴史、活動、戦略、理念についてまとめている。

NEW RULES

Rifle Clothing

わずかに1ページだが、今回のISSF NEWSの中で最も目を惹く記事である。


「ISSFの技術委員会・ライフル委員会の勧告についてコメントの付けられたメッセージがWeb上で公開された。
今回掲載された小文は、かつてのアルゼンチンの代表射手で現在はスポーツ科学のドクターである、リカルド・リオ(Ricardo RIO)教授による非公式なものだが、インターネット上のフォーラムで議論となったものである。」との前文がついている。


硬さの問題を中心に、射撃用のジャケットやズボンのルールについては「模索」が続いている。
「かつて選手であり、現在スポーツ科学の専門家でもある立場から今のライフル競技を見て、服装によってスコアや順位が大きく変わってしまうことに憤りを感じている」
、としてこの小文は始まる。そして、
「射撃ウェアの、『硬さ』や『柔軟性の欠如』についての現在の水準は、IOCが掲げる『選手のパフォーマンスを人為的な方法で水増ししてはならない』という制約に、哲学的には抵触していると言わざるを得ない。射撃競技に携わる渦中の者には、このおかしさがなかなか実感できないだろう」
、と続く。


「射撃に関する文献を辿るだけでも、20年前は、まずフィジカルなトレーニングの重要さについて説くことが当たり前であったのに、このごろのものは明らかにそうではなくなっている。これは、ウェアが硬くなったのと引き換えにしてトレーニングを避けるようになった、という傾向を表している。私たちのスポーツは、安定した構えのためには、フィジカルやメンタルのトレーニングを通じてそれを追求するより、服装の工夫を凝らす方がいい、という不自然な道を辿っている。
いつかきっと、服装について納得してもらえなくなるときがやって来る。
その時には、シンプルな、スポーツの観点から考えられた『規則』、地面と体、体と銃の各接点で射手の体に傷がつかないという目的に限定し、安定性の増大には寄与しない『服装』、というところへ立ち返ることになるだろう。」


そして最後に、
「服装のルールについての劇的な変更で、現在の得点レベルから大きく後退することを望む選手はいないだろう。しかし、1000年に及ぶスポーツとしての射撃が持つ『本質』と、オリンピック大会において伝統的に守ってきた『地位』は、自然に反した現在の状態を頑なに守ることで近々その辺りで軒並み達成されるであろう『満射のオンパレード』よりもずっと大切なものの筈である」
、と締めくくられる。


現在、服装のルール改正について、委員会単位で検討が進められていることは、前々号のISSF NEWSのissf activitiesでも触れられていた。
さて、ロンドン五輪後の総会で採択される新ルールはどんなものになるのだろうか。

NEWS

The shooting sport industry informs...

ゲーマンの新しい射撃用キャリーバッグ「451」が紹介されている。
また、ワルサーがドイツの射撃協会とパートナーシップを提携し、様々なサービスに乗り出すことが書かれている。

IN MEMORIAM

IOC Honorary President Juan Antonio Samaranch

先日逝去した、アントニオ・サマランチ(Juan Antonio SAMARANCH)IOC名誉会長の死を悼む記事。1面を充てて、これまでの功績を称え、最大限に哀悼の意を表した記事となっている。


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