昨日と今日の結果

帰路に見た夕暮れ



全日本クラブ対抗戦。
8月末で切れるナショナルチーム選考会のランキング換算対象試合は残りが少なく、この試合は、密かに個人的に重要な試合と位置づけていた。
しかし思わぬトラブルで「出られるだけで幸い」というような具合になってしまったのは、昨日の分で書いた通りである。


昨日の試合はSくんに代わってもらったおかげで、少し休んでから試合に臨むことができた。
試合開始時刻が16時25分で撃ち終わりが20時前という、「夜の部」と勝手に呼んでいる射群だ。
事故の後のよくわからない高揚感みたいなのもあって、仮眠の後、身体は軽く感じたので、大丈夫かな、と思ったのだけれど、試合前にあった代表者会議が、また、どうもよくなかった。


「代表者会議」とは言っても、基本的には、その時間帯に出席できるクラブチームの代表者が集まって、翌年の開催地を挙手で決めたり、運営上の問題点(事務局からの各クラブへのお願い、という形で提起されるのが常である)について話があったりするだけなのだが、昨秋から、団体戦の順位決定方法について見直しを進めるようなことになっている。
今回も、チーム内ではすっかり古参になっているので、まだ試合には少し時間があるし、と何の気なしに出席してみると、私が発言や説明を求められる立場に変わっていてびっくりした。
昨秋の会議で偶々、種目によって貢献度が大きく異なってしまう「総得点」ではなく、種目別団体順位をポイントに換算して、その獲得量で競う方法を、ぽろっと提案してしまったばかりに、すっかり私が見直しの推進者ということになってしまっていたのだ。


種目が男女別種目化されて、種目の種類や種目間の弾数のバラエティが増えてゆく中で、昔の総得点法では、チーム全体の実力が測りにくくなってしまったのは確かである。弾数の多い種目で、いい成績を挙げられる選手を抱えるチームがどうしても、有利になり、女子のいい選手をいくら育てても、団体としてはなかなか上位に出られない、という状況がある。


ただ、新しい方法が「いい」とは思っていても、長い歴史をもつ「団体戦」の根幹に関わる見直しなので、なかなか重みがある変更なのである。各クラブを代表して出席している、射撃界の「大先輩」たちを前にいろいろ話をするのは、いちいちとても緊張する。
大会の実行委員長は、詳細についての誤解はあったものの、基本的に変更に前向きで、私はすっかり新方式についての「説明役」になってしまった。
昨年わがチームは、現行のルールで総合優勝しており、そこから出席している私が、「団体戦として、どの種目の参加者の力も等しく反映できる」という、公共的な理由で、あえて自らのチームにとっては不利になる「新ルール」を提案するのだから、意味のない役回りでもない、と思う。
優勝常連の強豪を代表して出席しているMさんが、一緒に補足の説明をして助けてくださるのがとても心強い。
しかし、20分足らずの会議ですっかり疲れてしまった上に、あれこれと気になることをいっぱい抱えてしまった。


その後で撃った「夜の部」の成績は(やはり)冴えなかった。


伏射は390。
何とか崩れそうなのをしのいでまとめた、という感じで、98 97 97 98というスコアが示すように、確信を持って10点を続ける、という状態にはついにならなかった。
立射364。
10点は続かない、大きく立て続けに外す、と散々だった。9発目10発目と7を撃って88という1シリーズ目で、すっかり勢いは削がれてしまった。技術の問題もあるだろうけれど、どことなく集中のレベルが低く、現実との間に薄いベールが挟まって、他所事のように過ぎる感じがした。
膝射もずるずると9を重ねて369。トータル1124・・・。
久しぶりに50mにきちんと参戦してきた今季、前半戦の間に戻しておこう、とシーズン当初に描いていた水準には、及ばないまま、前半の最終戦が終わってしまった。
それだけではない。今回の「失敗」は、人生における数年単位のひとつの周期に、終止符がまた打たれたことを意味していた。


昨晩プリウスが故障したとき、すでに「ロンドン」には赤信号が点灯していたのだろう。
車のトラブルは、単にとどめを差してくれただけで、それが「原因」ではもちろんない。
「周囲の状況に合わせていく」のでいっぱいいっぱいで、結局、選手としての備えは、ここまで全くといっていいほどできていなかった。またしてもこの4年、生活の中でいろいろにバランスを取ることに終始して、その上に結果を積み上げるところまで行かなかった。
思うように調整できない、という「ままならなさ」は、「こうしたい」という絵があると、身に沁みる。
「一瞬一瞬を無駄にすることなく、精一杯よくやっている」と思う傍らで、「ただ目一杯に頑張るだけでは駄目である」ことに対してじわじわとくる「挫折感」をしばらく味わうことになるのだろう。


今日は、10m立射だった。
「曲がり角」のせいではないと思いたいが、こちらはさらに酷いことになってしまった。


バランス・静止・撃発の状態はさほど悪くない(いや、むしろ良いと言った方ががいいくらいだったのだが)、何がどう狂ったのか、頭を降ろしても思った位置にチークピースが来ない。
がっちりと構えが決まって、万全の安定感が得られた、その状態で、目の前にピープが来ず、チークも頬にフィットしない。
仕方なく照準を優先すると、せっかくのバランスや安定が損なわれて、しかも映像と弾着が一致しないことが頻発する。
スコア的にも序盤から大きく崩してしまって個人としてはどうにもならなくなった。団体戦として、他の二人が高いレベルでがんばってくれているのを引っ張ってしまわないように、と必死で耐えるだけである。
鏡像をもとに変更した、バットプレートの接点位置変更が今日はマイナスに働いているかもしれない、と試合半ばで修正。10発以上センターを続けられる状態にまで戻ったのだが、その後再び崩壊。乱高下したスコアは、ついに580まで下回る579。最近では記憶にないほどの、ひどい結果になってしまった。


2回目の代表者会議を、またどきどきしながら片付けて、早々にSさんと帰途に着いた。


団体成績が気になっていたのだが、それを知っていてくれたFさんが「夜の部」を撃ったあとでメール速報を入れてくれた。
10m立射は、大会記録での優勝だった。
優勝には、心底ほっとした。
個人で1位2位を占めたYくん、Mくんのお陰である。新記録については、私がもうすこしでも普段どおりに撃てていたら、素晴らしい新記録になっていたはずだったのにと、あらためて悔いを感じる。


さて。
射撃について、私の中では、反省を加えつつも何も変わらず、まだまだ探求を続けていく気でいる。
しかし、誰も気がついていないとはいえ、客観的には大きな曲がり角を、またひそかに曲がった。


トラブルばかりが目を惹くが、心密かに重いものを含んだ今回の遠征であった。


[fin]