練習会


母校の「コーチ」業は、Iくんに頼りっきりで、本当におろそかになっている。
5月ごろにお願いされて予定を繰ったところ、この日が何もなさそうだ、ということで、ずいぶん「先」の約束をした。
部員が10人くらい能勢まで練習に来てくれるという。来週一緒にクラブ対抗に出ることもあって、Iくんも来てくれるというから心強い。


なかなか「教える」ために射撃場まで出かける機会はないので、これを機に、「教えて」と頼まれている人や、教える必要のある人たちにも声をかけてみる。
やはり来週一緒にクラブ対抗に行く、チームメイトのSさんからは、一昨日「この週末に練習に行く予定はありませんか?」とまるでこの予定を知っていたかのようにメールが来た。プロジェクトで指導を担当していながら、なかなか一緒に練習できないでいるTくんも誘った。


今朝はやく、二人を駅で拾って、能勢へ。
ちょうど9時ごろに着くと、もう学生たちは到着して準備を始めていた。
簡単に自分の用意をすませて、練習を見る。


10mは、チームの中で最も勢いのある2回生たちが中心だった。
撃っているところを見るのは関西オープン以来で、そのときの記憶と照らし合わせながら、ここまでの試合や練習でのことをそれとなく聞き取る。
外見から予測できるパフォーマンス上の問題点が、本人たちの感じている問題と一致するかを確かめて、直接間接に指摘や助言をした。


50mは、4回生2人とキャプテンのTくん。
Tくんの右肩が窮屈そうなのを除けば、問題はさほどなく、主力らしいよく考えて落ち着いた練習をしていた。
来週のクラブ対抗を控えてAさんらの姿もあり、にぎやかだった。


Tくんは、春先の合宿明けに全日本で大活躍して以来、選考会まではそこそこ結果を出したが、その後少し調子を崩している。
合宿で作りあげた方法論やパフォーマンスを一つの基準にすること、その後付け加えたものをいったんリセットして取り組むことを薦める。
そんな「絶好調」とは言えないTくんだが、私の母校の部員にとっては、毎回関西の学生の大会では優勝争いに絡み、海外遠征にも挑もうかという彼は、異次元の存在として映っているかもしれない。
その一方で、射撃一本ではるばる関西の大学にやってきたTくんにとっては、どちらかというと勉強一筋で来て大学に入学するまで射撃を知らず、拙いなりに夢中になって撃っている学生たちの姿が新鮮に映っているかもしれない。
今回Tくんを一緒に練習に呼んだのは、彼らの交流がお互いにプラスになるだろうと思ったからでもあった。


「昼ごはんの時間は一緒にすごしておいで」、とTくんを休憩に送り出して、私はつかの間自分の練習をする。
後で聞くと、気さくなTくんと部員たちは打ち解けることができたようである。
部員たちやTくん、Sさんにとって、今日はいい練習ができたようだ。


私自身の練習としては、西日本ではSBでだけ確かめた立射の新しい軸の把握ポイントと肩付けの位置変更が、10mでも使えるかどうかをさっと確かめるのと、50mの伏射をさっとさらうくらいのことしかできなかった。
まあ、試合前に銃を触れただけでもよしとしよう。


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