パン屋さん

ちまきを食べる



娘のパンへの執着は相変わらずだ。
通園の途中にある2軒のパン屋さんのチェックは欠かさない。


車で通りかかるだけなので、見えるのはほんの一瞬なのだけれど、開店前の準備で少しだけシャッターが開いてるのも見逃さず、
「白いパン屋さんは、ちょっとだけ開いてたなあ」
「・・・。」
「ちょっとだけ開いてたなあ」「帰りはちょっと寄ってみようか」
と矢継ぎ早に波状のアピールをしてくる。


白いパン屋さんが過ぎたら、次は「ピーターパン屋さん」だ。
近づく前から、
「今日は開いてるかなあ、ピーターパン屋さん開いてるかなあ」
と、ひとしきり期待を高めて近づくのを待ち、看板のパトランプが点いていれば、
「開いてるー!帰りはピーターパン屋さん行こうねー」
と、しばらく興奮状態。


・・・なのだそうだ。
すべて、相方の談なのだけれど、家でのパンへの期待感と執着の様子から十分に想像がつく。
保育園からの帰りになると、疲れてちょっと眠かったり、お腹がすいていたりするので、泣きも伴ったりして、もう大変なのだそうだ。


保育園からは、「パンは食事にはしないで、あくまで楽しみで食べさせてくださいね」と言われている。
園でもうちでもしっかりご飯中心に食事しているので、余計に娘の中で、何というか、「憧れの食べ物」的なポジションが確固としたものになっている。
食後に、小さなかわいらしいパンを少し出したりすると、本当に幸せそうに食べる。
パンとの付き合い方を娘に合わせているうちに、私たちの中でもパンはちょっとした「ハレ」の食べ物になってきて、たまに食べる機会は、なんだか特別な感じになっている。
これはこれで悪くない。


最近相方はつわりが少しきつく、仕事も仕方なく遅れたり休んだり、というようなことが続いている。
保育園だけはなんとか送迎しているが、辛そうに運転をしていると、それを察して、
「マーマがんばれ!マーマがんばれ!」
と後ろから応援してくれるのだそうだ。
「パン屋さんに立ち寄ってほしい」と泣き叫ばれたりすると大変だろうと思ったりしたけれど、そういうことばかりではないようだ。


「泣けることをするねえ」と、二人で寝顔を眺めながら感心する。


[fin]