50m伏射

ずらりと10mの膝射



今日明日と、近畿周辺の開幕戦となる、関西オープンである。
近畿は関西の学生ほぼすべてと多くの社会人に、岡山や福井・岐阜・愛知あたりまで広いエリアから集まる選手を加えて、盛大に行われる。
今年も変わりなくにぎやかな試合になった。


例年、日本記録を更新することをねらって、全国ひろしといえども、ここしか公式には行われない、10mの三姿勢にエントリーすることが多いのだけれど、今年は大会グレードがノーマルのG3ということで、記録公認が行われないため、練習を兼ねて50m種目一本に絞ってエントリーした。


どうしても10mにエントリーすると、そちらがメインという意識が抜けず、本来難しい方の50mへの意識がおざなりになって、ただ撃ってしまうようなことになってしまうことがこの2年くらい多くなってしまっている。
昨年末の選抜クラブ対抗での「大崩壊」以来、このままになってしまうのではないかという危機感が少しあって、「関西オープンは50mを撃つんだ」ということだけは結構意識をしていた。
崩壊している原因が、自分の体や頭の「やりたい」と思う姿勢と、それまでやってきた方法が一致しない感じがどんどんひどくなってきているところにあったので、まずは体や頭のやりたい方法に「実際」の方を合わせてやって、それがどうだか見てみよう、ということは、大崩壊のときから決めていた。
まあ、先々週のランクリストまで、結局一度も実際に撃ってみる練習は出来なくて、射撃ノートの上で、次にやってみる構えのためのセッティングの変更をある程度計画し、学生の指導で、構えて見せるときに、「あ、思っているのと近づいてる」なんて喜んだりすることで、埋め合わせてきた。


ランクリストの試射で、PもKもレンチ片手に、微調整を忙しく繰り返し、まずまずの手ごたえがあったので、その続きができる、というだけで今大会は楽しみだった。


今日は50m伏射60発競技。
伏射は、これまでめったにエントリーしてこなかったので、私の名前が伏射の射座割表にあるだけで、からかわれるような具合だった。


2週間前のランクリストでは三姿勢を撃ったが、点数的に伏射はひどいものだった。
でも、スモールボアを撃つの自体が3ヶ月ぶりであったから、撃発の感じがうまく取り戻せなかったことと、バットプレートの中にある固定ねじが緩んでいてガタガタしていたのをそのままで撃たざるを得なかったこと、そして、構えの部分だけで精一杯で、強風が吹きまくっているのに、ほとんど風対策をできないままパンパン撃っていたこと、と明らかに点数の出ない要因がたくさんあったので、あまり点数の低さは気にならなかった。
それよりもむしろ40発を通じて、姿勢的な点だけでも、何をしたいかがはっきりわかった状態で撃ち続けられたことに収穫を感じていた。


2射群だったのだが、風が今日もまたやたら強くて難しい。
風旗は、刻々と向きを入れ替えながら、ほとんどの時間帯で手前と奥で向きが反対にたなびいている。
姿勢は、前回のランクリスト1回で十分に調整ができたようで、ほぼ思い通りの感覚で構えることができた。


左の肘から先と、右の肩周りの状態だけしつこく感覚を確かめながら、余裕のできた分は風旗を一心に見て考えながら撃つ。
見れば見るほどめまぐるしくてややこしくて切れ目のない風である。
手前と奥の風旗を見比べて、右の要素・左の要素、どちらがどのくらい勝っているかだけを必死で自分なりに計算して合わせて撃つ。
なかなかきれいに10.5以上は出ないが、予測している方向に弾着がくるので、それを面白がりながら、淡々と作業を繰り返していく。
4シリーズくらいで、脳味噌のほうが疲れてくる感じがした。
「時間がかかっているな」という自覚だったが、時計ではペース的には、きっちり1時間15分で終わるくらいで推移していたので、そのままのペースで続ける。


周囲はどうもみんな早く終わっている。
撃っているのがほかに一人いるかいないか、という時間帯が随分長かったようだが、みんなどうやって撃っているんだろう、とふと思った。
6シリーズ目だけは風が弱まり、風を過大評価して2発外してしまった。弱まったときは、体の感覚だけに注意を絞ってしまう方がよさそうだ。
ぎりぎり590には届かず、589(98 99 98 98 99 97)で撃ち終えた。
風とちゃんと格闘した、という手応えを感じて撃ち終わるのはほんとうに久しぶりだ。どれとどれが撃発のミスか、などパフォーマンスの内訳が鮮明にわかっているのもそう。
あー、難しかった、疲れたなあ、と思って射座を出た。
同じ射群の選手は20人くらいいたが、私のほかは、571が最高だという。あー、やっぱりな、ただ早く撃ってただけだったのか、と変な安心をする。


収穫があればいい、と練習がてらエントリーした感じが強かったので、点数的には振るわない覚悟ばかりしていた。
早く撃ち終わるし、大学の後輩の撃っているところをみたら適当に切り上げて娘と遊ぶかな、と思っていたのに、善戦どころか優勝しそうなので、お昼を食べたりしながら次の伏射の最終射群を見届ける。
結果的にはやはり一番で、表彰式まで残ることになった。


大学の後輩たちは今大会、自己ベスト、それも部内歴代記録を更新したり肉薄したりするような点数が続出して、盛り上がっていた。
技術的な質問にくる子が珍しく多く、合宿などでずっと面倒を見てくれているRくんなどの努力が実を結んできているのだな、と感心した。
実際の指導の部分はもうRくん中心にこれからやっていってもらっても大丈夫だなあ、と思う。


10mでしか久しく感じられなかった、「自分のコントロール下で射撃をする」という手応えを50mで感じられたことが、とてもうれしくて、わくわく血が騒ぐようである。
こんな、次が楽しみな感じで落ち着かない感じになるのは、5-6年ぶりだと思う。
それくらいに久しぶりに興奮した、今日の射撃だった。


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