石巻へ


幸い、会議がなくて、1時間休はたいして周囲に迷惑をかけずに取れた。
でも、出ようとする直前に書類作りの手伝いを頼まれて、結局のところ、想定している中でもっとも遅い、ぎりぎりの時間に職場を飛び出すことになった。
駅から停留所までは冷や汗をかきつつ、重い銃を担いで走る。一本でも空港バスを逃しでもしたら、昨秋の苦い経験を繰り返しかねないところだった。


荷物を預けると、すぐに搭乗手続きをしてゲートをくぐり、バーに飛び込んでカレーを頬張る。今日はこれが夕食だ。


検札機に搭乗券を通したら、階段を下ろされ、出口に停まっているバスで小型機に向かう。
えらく小ぶりなプロペラ機だ。
座席の窓のすぐ外に大きなプロペラがぶんぶんと回っていて、ものすごい音である。
耳と頭がじーんとしびれるような感じになって、うるささが何か違うものに変わってしまう。そのうちにその轟音の中で寝てしまった。
飲み物のサービスがあったかどうかもわからないくらいに、ほとんどなにも覚えていない。
気がついたら、着陸直前で、暗闇の中やたら地表が近い眺めが目に入ってきて、「うわ、どうなってるんだ」とえらくびっくりした。


レンタカーにナビがつくようになってから、遠いところへも、ほとんどろくに準備をせず、適当に出かけてしまうようになった。
ちょっと前までは考えられないことだ。
ETCもついていて、ほとんどが機械任せ。機械に言われるままにすいすい走らせるだけで、まったく無駄足を踏むことなく、予約したホテルに着いた。


荷物をほどくのもそこそこに、試合前のアスリート、というには程遠いコンディションで、ぐったりとベッドで眠りにつく。


[fin]