そりですべる

ゲレンデにて



相方の体調がいまひとつで、今日は娘と二人で午前中の散歩に出かけた。
せっかくいい天気だし、ちょっと休みらしい外出にしよう、と車で大きな公園に向かった。


馬見丘陵公園に行こうとして臨時駐車場に入り損ね、となりの竹取公園に入った。
はじめてだったけれど、何かの縁だと、そのまま目的地を変更した。


駐車場から、階段を降りようとすると、いきなり芝生や川を模した流れに沿った庭園が見渡せて、とっても素敵な公園だった。
娘は、階段を降りたとたんに芝生をうれしそうに駆けまわった。
高床式倉庫と竪穴式住居が再現展示されているのを見つけて、「おうちー」と、はしゃぐ。


八つ橋のかかった池を、アスレチックよろしく乗り越え、走ってわたると、「ちびっこゲレンデ」というのが現れた。
人工芝で作られた傾斜をそりで滑り降りる施設である。無料であるが、きちんと柵で仕切られていて、受付のような入り口のあるアトラクションになっている。


娘の行っている保育園では、園庭の斜面をそりで滑る、という遊びを園児たちがしているらしい。かなり急で長い斜面なので、さぞやワイルドな滑りをしているのだろうと想像するが、娘はまだちょっと怖くて、あまりできないのだそうだ。


どうするのかな、と私は娘の反応を見ることにした。
真剣な顔で、中で遊んでいる親子たちを見つめている。
「どうする?」と尋ねてみても、動かない。
「また今度にするか」というと、ほっとしたような顔で「うん」、と反対方向に歩き出した。
ものすごくたくさんのことを考えたのだろうな、とほほえましく様子を見ていると、ちょっと心ここにあらず、のようで、遊歩道脇の柵にぶつかったりしていた。自分で、照れくさそうに「あはは」と笑っている。


少し行くと、斜面を生かしたアスレチックがある。手をつないで坂を登ったり、木の遊具に挑戦したりした。
娘は、斜面の緩やかな階段を上り下りするだけでとても楽しそうだ。
遊具は、結構高さがあって、鎖で吊るタイプのものなどは動きの自由度が高く、勇気を試されるものになっている。
小さな男の子が、祖父らしいおじさんに、はっぱをかけられながらおどおど渡っていて、おじさん・男の子、どちらにも感情移入させられた。
娘は、こちらでは怖いもの知らずといった感じで、全身を使って板の坂を這い上がり、背丈の3倍以上もある高さの支柱のうえに、私と一緒に立ったりした。


アスレチックが終わると、私は帰るつもりで、来た道と違うルートを駐車場へと向かった。ところが、最初の芝生まで戻ってくると、あっちに行こう、あっちに行こう、と何となくまた八つ橋のかかった池へと娘に連れ出され、再びちびっ子ゲレンデまで来てしまった。

もしや、と思って、「するの?」と尋ねると、「する」と言う。
へー、と思って、受付の方に回りこむ。
ヘルメットとそりを借りて、かぶせてやると、「ぼうしー!」とまず、そのヘルメットがすごくうれしいようだった。
そりは、自分で引っ張っていかせる。


中に入ってゲレンデを見渡せるところまで来ると、じーっと立ち止まってみんなのすべる様子を見ていたが、やがて思い直したようにせっせとゲレンデの階段を上りだした。
上に着いたので、「ひとりですべる?」というと、「ぱぱと」と言うので、一緒に滑り降りた。
結構スピードも出るし、気持ちいい。


「3回まで」とあるのを、2回で切り上げて出てきたのだが、施設の外まで来ると、立ち止まって「もっかいする」と訴えるので、3回目を滑りにもう一度入りなおした。


済んで出てくると、満足感と達成感があったらしくて、ちょっとそれまでと違う感じではしゃいだ。わざと通りにくい、池の端の岩場を乗り越えながら歩き、嬉々として駐車場まで戻る。


「家に帰ったら、ママに報告しないとね」
「うん」


今日も素敵な休日になった。


[fin]