全日本選抜クラブ対抗戦


昨晩から藤枝に来ている。


先月は、何も試合がない「空白月」だったが、今月のはじめから来月の前半までは、週末すべてに、試合や合宿の指導、総会など何らかの予定があって塞がっている。
そんな中にあって珍しく、昨日は「移動日」だけの一日だったので、昼過ぎまでのんびりと過ごすことができた。


今回の選抜クラブ対抗戦はチームとしては最小編成で臨んでいる。来週クラブの地元であるチーム対抗戦と併せて、ここから年末にかけては、「育成」の趣を強くしている。
先週までの、シーズン最後にして最大の「山場」を終えた後には、そこに絡まなかった選手たちが今後に向けて頑張る場が必要だ。


私は10m種目を後輩たちに譲り、50m2種目、という今シーズンの流れからすると全く備えのない部分を請け負った。
先週まで10m1本で連戦続きであったので、9月初旬の千葉で社会人選手権を撃って以来、今日まで1度もスモールボアに触れてさえいない。
社会人以降に、10mでは様々なことを経て、技術的な前進があったので、それがどんな風に影響するか楽しみであるけれど、試合と言うよりも練習やテストのようになってしまうだろうな、それでいいのかな、と懸念する。


今日は三姿勢120発を撃った。
伏射は右肩の構造と感覚について、10mで実際に試したり選考会でいろいろ観察した結果、「しよう」と思い描くパフォーマンス像に9月から変化があった。プレパレーションタイムで、どうにもバットプレートの角を邪魔に感じたので、外してしまう。
ゴムのバットプレートだけ、という点ではエアライフルと同じになったが、反動がない代わりにセッティングの自由度が小さく、フィットよりも相対的な銃の位置を優先せざるを得ないエアライフルに対して、反動への対応が重要で、可動部の大きさでベストフィットを追求しなければならないフリーライフルは、かなり違いがある。どこが当てどころとして正しいのか、一から探さなければならない。
空間的な位置関係については、思い描く像に、ある程度あてはまる姿勢を作りつつ、肩−首辺りの感覚については模索をしながら撃った。
不慣れさから、撃発などのミスが多かったものの、10.7以上の深い10点が非常に多かった。点数的にも389なら、まずまずだろう。
角を外して撃つと、銃がコンパクトになったように感じる。これまで、角と格闘してしまって接点の感覚がおろそかになり、振り回されていた部分がかなりあるのだろうな、とあらためて思った。


立射は、セッティングなどに変化はなかったが、この2ヶ月弱で軸やバランスの作り方がすっかり変わっている。
エアライフルで得た手応えは、ここでも同じように感じることができた。
銃に対する慣れの不足から、微妙に10点を外すことが続き、得点的には伸びなかったが、銃の動きの安定感や、撃発時の像と弾着の一致などに、質の向上と維持の容易さを感じることができた。試合自体よりもパフォーマンスの内容に注意が行き過ぎて、疲労してしまったり、うっかりしたりの大外しを含んで368。そうひどくはない。


さて膝射。
この2ヶ月弱の間に限らず、膝射の絶対的な練習量が少なすぎるのがいけないと言えばそれまでなのだが、社会人選手権前や西日本選手権前には、少しはまとめて練習をした。しかし、その中でもずっと、それまでの撃ち方に対して感じた「違和感」の処理に、今年は失敗し続けてきている。
9月の千葉でも、膝射は模索途上で撃たざるを得なかったうえに、大失敗で終わっており、今回はそれ以来はじめて撃つ。考えうる中で最悪の状態で、試合に臨んでいると言っていい。


さてどうしたものか、と姿勢交換の短い時間に考えた。
すべてが終わった今になって振り返れば、昨年までの方法に戻して無難にやっておけばよったのであるが、伏射・立射と、模索の延長でそこそこ何とか撃ち、しかも収穫があったことに引っ張られて、千葉の続きで何か収穫を得ようという気持ちが勝ってしまった。
千葉のセッティングで構えると、肩−首の部分はどの姿勢でも共通する変化であるためか、伏射同様に角が邪魔になって、思い描いている姿勢が取れない。
ならば、と角を外した伏射用のバットプレートに付け替えてみることにした。この時点で、もうプレパレーションタイムは終わっていて、とっくに試合時間に入っている。
高さはそれまでの膝射用に合わせておいたが、バットプレートの構造の違いから、ストックの長さも数センチ単位で変化する。ハンドストップなどで、咄嗟にその分を調整したのだが、どうにもこうにも、急にやるには変動させる要素が多すぎて「しっくり」にはほど遠い状態にしかならなかった。


時間がないので、試射を撃ちながら調整することにしたが、どうにもうまくいかない。
残り時間が刻々と減っていくので、ええい、と本射でさらに調整することにする。
10数発撃つも、6や7が出て1シリーズ目は81点とひどいことになった。
団体戦でなければ、そのまま練習してしまったかもしれないが、チーム的に最低限守らなければならないラインというものがある。このまま続けるわけにはいかない。
2シリーズ目の途中でやむなく、昨年まで撃っていた古いセッティングに総とっかえすることにした。


スリングのジャケットへの固定位置から、バットプレートから、サイトやハンドストップの位置から、全て違うセッティングに慌しく再セットして座り、わずかになった残り時間を睨みながらとにかく撃つ。
試射もなく、しっかりフォームを落ち着けて微調整する間もなくバンバン撃たないといけなかったので、9点のオンパレードになるが、まあなんとか1100点台はキープして撃ち切った。
姿勢を確認すると、そのセッティングで本来バットプレートを当てるべき場所より、相当上方に肩との接点があり、昨年のものと比べても肩を高く保ったフォームを、身体が取ろうとしていることがよくわかった。


今回の試合は、「試合」としては問題が大ありだけれど、技術面の収穫だらけでとても楽しかった。すぐ手の届くところに果実のありそうな発見がいくつもある。
元々三姿勢の方が好きで、やるべきことが山のようにあるのがたまらないのだけれど、練習時間や環境の面から、高い水準に早く到達して勝負するには、今後もまず10mに焦点を絞るしかない。
兼ね合いは難しいけれど、試合で実験しなくていい程度には、技術やセッティングを整理できるよう、50mも少し練習をして、来シーズンはちゃんと貫禄を示したいところである。


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