許可更新手続き


誕生日二月前になると毎年、銃器の所持許可更新に向けて、ごそごそ動きはじめなくてはならない。
今年も10月2日に、半日職場を抜け出して、許可更新の申請をした。


今年は、猟銃等講習会の講習修了証明証が切り替わる年なので、期限が切れる前に、と少し早めに行ったのだが、
「三年に一度必ず受講していただく関係から、3年前の許可更新に使われた講習修了証明証は、期限内であっても、今回の更新申請には使えません」
と申請を拒絶されてしまった。

1丁だけ所持している人ならそういう心配もいるだろうけれど、複数銃を抱え、毎年更新する私にとっては、「6年間の空白」なんてあり得ない話だ。
それに加えて、証明証の有効期限って、そういう運用上の都合で勝手に切られたりしてもいいものだろうか、という基本的な疑問と、告知なく「組織の内規」を利用者に押し付ける姿勢への不快で、少しむっとしてしまったが、こういうものはここで頑張ってもどうにもならないので、次善策を尋ねた。


結論から言うと、経験者講習会をその場で申し込んで、再び仕事の都合を付けることになった。


経験者講習のことは忘れていたわけではなく、こうして早めに申請するくらいであるから、もっと早めに受けたいと思っていたし、今回だっていつ行われるのか、ネットでは相当に調べたのだ。しかし、どこにも公表されていなかった。
今時、内規を押し付けるならば、日程公表は一方でやっておかなければならないはずの当然の一策で、これがないのは不親切である。
在住県と所属協会が異なる者にとっては、組織同士でする内々の日程伝達だけでは知りえないのである。


平日の勤務時間内に、講習や書類の申請やら、検査やらを全てやらなければならないのは、勤め人には難しいものである。
ことに、「外回り」のような、自分で時間を裁量できる仕事が皆無な業種では、仕事の都合を付けて休暇の申請をせねばならない。
「申請」のために一度休みを取ったつもりが、「講習の受講申し込み」に終わってしまい、この後さらに「講習会受講」と「再度の申請」のために2度、申請期限までに休むのは無理だ、と訴えると、講習後に警察に直行すれば受け付けると言ってくれた。


今日がその経験者講習会であったので、4時間目の授業を終えてすぐに職場を飛び出し、会場に向かった。
なんとかぎりぎりの時間に会場に滑り込む。


空腹と眠気に、うつらうつらしながら聞く。
講習の後半は、銃刀法改正にともなう、警察側の苦悩がにじみ出ていた。
私たちが今回の改正を受け止める際の、競技者団体側の視点とはもちろん異なっていて、立場を変えても今回の変化が相当に戸惑いを伴うものであることがよくわかった。


技能検定を銃種全て、全所持者に対して全都道府県で行わなければならない、という変更が管理する側にとっては最大の問題となっている。
私の住む県には、検定をしようにも大口径を撃てる射撃場がない。そういう県は他にもいくつもあって、全国的に府県間の配分・調整の連携なしには、まったく立ち行かないようである。
他府県まで検定を受けに行かなければならない所持者も大変だが、各所持者の不満を知りつつ府県単位で所持者全員を他府県の射撃場に責任を持って振り分ける側も、振り分けられて来る他府県からの検定を受け入れなければならない側も、相当に大変だ。


30名近い受講者の平均年齢は60歳を越えており、これだけの変化についての説明を、すんなり理解できるだろうかと危惧していると、やはり、ここまでの説明の流れから逸脱して「所持をやめさせようとする嫌がらせだ」と噴きあがるおじさんが現れた。
受付時間までに申請に行きたいのに勘弁してくれ、と思ったがどうしようもない。県警本部から来ている講師は、後で個人的に話を聞きますからと、さっと話を引き取って、最小限の遅延で講習を終わらせてくれた。


講習修了証明を受け取ると、大急ぎで管轄署に向かう。ぎりぎりになりそうなので、電話を入れると、もう間に合いませんよ、と断る気いっぱいの応対で、こちらもなかなかすんなり行かない。先だって約束していることを伝えて了解を取り付け、電車に飛び乗る。
たかだか1メーター以内の距離だが、駅からはやむなくタクシーを使った。


何とか時間内にたどり着いて、手続きは済ませることができた。
担当者は、改正に伴う本部からの指示に追われているようで、ここでも困った様子でいろいろ尋ねられた。散弾の許可を取っているのに、ライフルの講習に回さなければならない、ハーフライフルの所持者を把握しかねて、警察は困っているようだ。


技能自体を普段から競い、狩猟者とは比べ物にならない量の練習をしている、競技団体所属の所持者は、今回の制度変更におけるこの部分については、何らかの形で実績報告することで免除される見込みである。
そういう意味では、傍観者の立場なのであるが、5-6年後、移行期間が完全に終わるまで、小さな混乱が避けられなさそうなのは気がかりなことである。


[fin]