おかえり


私の方が家にいて、外から帰ってきた娘に
「おかえり」
と言うと、娘も
「おかえりー」
と言う。


ちがうよ、帰ってきた人は「ただいま」っていうんだよ、というと、少し練習してみる様子だが、難しそうにしている。
「ただいま」、ということばは聞きとりにくく、また言いにくい様子である。


今日、仕事から帰って、お風呂中の二人のところに顔を出すと、
「ぱぱ おかえりー」、と娘の方から言ってくれた。
ただそれだけのことなのだけれど、とても新鮮で、嬉しかった。


保育園の帰りから夕飯にかけては、ひとり奮闘する相方を、毎日相当に困らせているらしい。
パパが帰ってくるとごきげんだけれど、そりゃあもう、ひどいのよ。
と、娘が寝付いたあとに不機嫌な顔で訴えられる。


ここのところ、そうは早く帰ってこられない日が多く、娘が起きている時間に帰って来られればラッキーな方で、お風呂なんか入れてあげられるときは「特別」という具合である。
おのずと、私の扱いは娘の中で「ハレ」に属し、相方が一手に「ケ」を受け持つ、というような感じになってしまう。


せめて朝くらいは、と一緒にベランダに出て物干しを一緒にし、朝食の相手をする毎日である。


[fin]