花桟敷

丘の上で



場所が変わっても、娘はとっても早起きだ。
5時過ぎには起き出してきて、仕方なく周囲もそのペースに引っ張られるようにして動き出す。
6時過ぎには朝ごはんを食べていた。


海は、行くとしても水温が上がっている午後にしよう、ということで、出かけるところを考える。
休日ならではの気分転換としては、普段の生活で見ている景色とできるだけかけ離れたところがいいな、と定番の「あわじ花桟敷」にする。


遠くに海を望む、ただただ広い草っぱらに、特段の花の季節とはいえなくても、あちらこちらに花畑が広がる花桟敷は、いい。
結婚前の相方と訪れて以来、2年ぶりに行ったけれど、その時に負けず劣らずの好天となった。


車が山を登っていく間に娘は眠ってしまい、到着後はバギーに乗せた。
しばらく、休憩所でご当地ものらしい「びわ」のソフトクリームを食べ、義父と相方はお土産を物色する。


野に出ると、娘は目を覚ました。
花桟敷の中では一番低いところにある、芝生の小高い丘まで下り、そこでバギーから降ろす。
いつもならバギーから解放されるのを喜ぶところだが、寝起きの不機嫌か、見慣れない環境への恐れからか、抱っこをせがんで、いまひとつ調子が出ない。


丘の隣に広がるサルビア畑は盛りを過ぎて少し枯れ色が混じってきている。それが色とりどりの混色に一味を加えて、とてもきれいな織物のような景色になっている。印象的だった。
いわゆる「見頃」ではないのだろうけれど、抜けるような濃い色の青空と、その織物のような畑の対比が素敵に映った。


木道のところへ着くと、その表面に触発されるものがあるのか、とたんに元気になって、娘が歩きたがった。
登りは、義父と相方の手を借りてせっせと歩き、平坦になると大喜びで一人駆け出す。
そのまままっすぐ駐車場に上がるつもりだったのだけれど、どうしても階段を降りたいという、娘の主張に負けて、木の階段をせっせと降りては登るのにみんなで付き合う。
随分また逞しくなったものだと、カメラを向けながら感心する。


昼寝のあと、簡易プールで水遊びをしたので、海はなしになる。
「じゃーして」と、水をかけてもらったり、はねかしたりして、じーちゃん・ばーちゃんと大騒ぎをしていた。
少し前まで、簡易プールに描いてある大きなイラストが怖くて嫌がっていたのが嘘のようである。


夜には、祖母・義父母・相方・わたし・娘の6人、相方の祖母の実家に招かれて、夕飯をいただいた。
おじさんが出してきてくださった、私たちの結婚式の写真を、娘が一心に見ていた。
「ばーちゃん」、「じーちゃん」、「パパ」、と小さく写っているものまで、正確に指差していくのだが、「パパの横は?」と相方が何度尋ねても、どうしてもわからないらしいのがおかしくて、空気が和んだ。


[fin]