夏休み

波打ち際で



今年も、淡路島で短い夏休みをすごす。


お盆と阿波踊りと、高速料金の割引があって、渋滞の予想が難しい。
明日からの一律1000円は避けて、予定を立てたものの、スムーズにはたどり着けないことを覚悟する。


義父と4人、ごく普通に朝7時半に出発した。
名神に入ってしばらくするとぐっと車が増え、神戸市内に入ってからは1時間以上かかってもなかなか出られる気配がなかった。たまらず京橋のPAでトイレ休憩を取ることにした。
まあ、お昼を回るようなことになっても、娘の昼ごはんになる、お握りと煮物のお弁当は作ってもらっているし、と腹を括って再出発した。


ところが、不思議なことにわずか10数分の休憩を終えて出発すると、車は相変わらず多いものの、それまでののろのろが嘘のように滑り出した。
山陽道へのジャンクションや明石海峡大橋は空いていて、覚悟していたよりもずいぶん早く淡路島入りすることができた。


なじみの地元の食料雑貨店で昼晩の食糧を買い込むと、別荘に早速入った。
窓を開け放ち、掃除をする。


布団や座布団を干し、掃除機をかけて回る一方で、水を流して拭き掃除、さらには扇風機を解体してきれいにする。
物の少ない、がらんとした家を、手分けしてはたはたと片付ける様に「夏休み」を感じる。
子供のときとは異なった感じ方だ。
娘も押入れから座布団を出したり、板張りの床を拭くのに加わったりして、楽しそうにしている。


一通り片付くと、相方が用意してくれた昼食を摂って、一息ついた。
さて、今日はどうしようか。


涼しいところに出かけようか、という案もあったけれど、折角だから娘が海になじめるように、ちょっとずつ何回も海にいけるようにしよう、という相方の意見で、今回の休みのプランは決まった。
夕飯の下準備だけして、早速近くの浜に4人で出かける。


浜はにぎやかだったけれど、早くから泳ぎに来ていた人たちが引き揚げることもあって、駐車場にはすんなり入ることができた。
義父とパラソルを立てて、娘と体操する。
去年も、この浜に娘と来たが、ほぼ短時間の写真撮影会、という感じで、波打ち際で座って、湿った砂を握って遊んでいただけだ。
再びのはじめて、といったところだろう。


さあ、入るぞー、と言うだけ言って強くは促さず、波打ち際まで私と義父が行って、娘の様子をうかがう。
浜を洗う波と海のかなたをじっと見て、何か考えている。
結構な時間であった。3分は海を睨んでいたのではないだろうか。
波打ち際に座って待っていると、意を決したように、時々立ち止まりながら少しずつ水際に近づいて、「じーちゃん」と大好きな義父のところへやってきた。
水を触らせたり、かけたりしても喜んでいる様子なので、浮き輪に乗せて水に入った。


入らなくなったから、と譲ってもらった幼児用の浮き輪なのだが、浮き輪の穴のところが、脚を通す2つの穴のあるシートになっていて、輪の部分には子供が握る取っ手がついている。
うまくできているなあ、と感心させられる。


少し怖がるかな、と思ったのだが、大喜びしている。
水の上を、引っ張りまわして、今日の水遊びはおしまい。
日差しは強いし、水に入るのは疲れるものだ。初めてのことならなおさらだから、と浜に到着してから全部で1時間くらいで引き揚げる。


「うみ」と指差して話をするのだが、思うところがあるのか、かたくなに娘は海のことを「プール」というのがおかしい。
水際を離れて、車の中からも、海を指差しては「プール・・・」とつぶやいていた。


娘はとても楽しかったようで、夕食後も、これからまたプールに行く、とごねるくらいだった。
首が据わったとたんから、頭からざーざーお湯をかけて髪を洗ってきた成果なのか、水は大好きな一方、初物には慎重なところがあるので、どうかと心配もしていた。
海とは幸せなファースト・コンタクトとなったようで、なによりである。


[fin]