選手強化合宿初日


7時前にHくん、Sくんと散歩に出た。
宿の周辺にどんな道があるか探索がてら、うろうろしてみたのだが、近くのダム湖の水辺周辺は、短い荒れ気味の山道ばかりで、ちょっとウォーキングコースになりそうなものはなかった。
ダム湖というのは水位が大きく変化するものだからしかたがないのだろうか。
舗装された道路を少し下って、ダムの上を渡る道に落ち着く。
そちらに脚を向けると、選手たちは大半がそちらの方に行っていたようで、戻ってくるのに出会った。


射場がそれほど会場時間に先立って早くは開いていないだろう、と9時10分前くらいに行ったのだが、すでにクレーの音が響き、完全に射撃場は使える状態になっていた。これは合宿する側にはとても助かる。
明日からはもう少し早く射場入りすることにする。


午前一番に希望者対象で撃発から撃発までのプロセスの講義をする。
定番だが、いろいろな指導はここからしか始まらない、と思う。
参加メンバーには、すでにどこかで何度も指導したことのある者がたくさん混じっているので、聴いたことのある人はいい、と伝えるが、数人を除いて、ほとんどが出席するようなことになってしまった。
私自身もスーチャックさんから幾度か内容の重複する講義を聞いて、そのたびに「ああそうか」と新しく気づいたり、いい加減になっていたことを戒められる思いがしたりして、毎回新鮮だったので、そんな思いで聞いてくれるなら嬉しいな、と思いながら、熱を込めて話した。
反応を見ていると、初めての者には、根底からいろいろなことを考え直す契機となるようである。


いろいろな合宿で提示するメニューは、最近いろいろ自分で考えて作っていたのだけれど、昨日渡したメニューは久しぶりに、かつてスーチャックコーチから教えてもらった中から、ただ選んで提示してみた。私自身もかつて教わったことについて、原点帰りして改めてその内容がどういうものだったのか考え直そうと思っている。


メニューをもらって練習する、ということ自体が驚きだという選手もいた。
メニューを提示して練習させると、練習自体が引き締まる。ただ、選手の力や課題に大きなばらつきがあるときには、グルーピングして複数のメニュー・プランを作らなければならないので大変だ。例えば、私は母校の合宿のメニューをかれこれ7-8年作り続けているが、並行して3つから4つのメニューが必要で、作るのに随分頭も使うし手もかかる(それでも、とてもあんなにたくさんこなせません、という子や、さっさと適当にやって暇になってしまう子が出てしまうものだ)。
逆に、ある程度選手の粒が揃っている「強化合宿」は、シンプルにひとつのメニューで進められてメニュー提示をするのに向いている。
もっとレベルが上がれば、メニューを自分で考えられるようになるから、それを提出してもらって助言を加えることで、有効な練習を行えるようになる、のだがそれは今は夢の話。
そうなるには、指導するこちら側も数段成長しなければならないだろう。


夜、まず私から、メンタルに踏み込んだ話をする。
この面において私は、少し実践を心がけはじめた程度の素人なので、講義する側としては、これまでこの話題を避けてきた。
もし本当にメンタルトレーニングに取り組むなら、専門的なスキルを持った人に数時間、更にその後継続的に取り組む必要のあるものであること、わたしはヒントを提示するくらいしかできないことをまず断る。
「そういうもの」に関心を持ってもらって、自分なりにアプローチしようと思う者が出てくることを期待する、という講義である。


学年や学校ができるだけ多様になるように、コーチのFさんにチームを編成してもらって、「コントロールできるもの・できないもの」という題でグループワークをしてもらった。
一人ではさほどたくさん思いつかないワークシートが、4-5人で喧喧諤諤やると、結構出てくる。「できる・できない」で意見の割れるものも出て、なかなか面白い取り組みになった。


その後、心理的競技力検査(DIPCA3)に取り組んだ。メンタルについて取り組む際、その始めに、自己分析を行う方法として、最も基本的なテストである。
夜に学生にさせるに先立って、昼間にコーチ陣で真剣にやってみたのだが、さすがになかなかうまくできているな、という感想であった。


本来は招いたトレーナーがデータを管理する。今回はそういう形態が取れなかったし、我々は選手に直接関わるコーチでもある場合があるので、データは選手自身に管理させる。彼らは自分で分析する必要がある。
項目についての解説プリントをつけて持ち帰らせたが、うまく役立ててくれるだろうか?


その後、Sくんから、ストレッチ・フィジカルトレーニングについての軽めの講義と足裏マッサージ法の実習をしてもらって、1日目の夜は終わった。


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