一斉検査と火薬譲受許可申請


例年恒例の、年度初めの一斉検査。
この町で受けるようになって、もう12年目になる。


昨年は、佐世保の事件を受けて、年度末に緊急に検査が行われ、家にも立ち入りで検査があった。
案内は早々に来ていたが、実施が5月のこの時期というのはゆっくりな方である。


所轄によっては、土曜日などに検査をしてくれるところもあるようなのだが、ここはそのような「市民の事情を汲む」姿勢はない。
平日の5時までに、自宅近辺に戻って出頭する、というのはなかなか一般社会人にとっては難しいことである。
仕事を必死で片付け、、相担者に頭を下げて生徒の終礼も抜けてさせてもらって、必死で何とかぎりぎり5時までに駆けつける。
保育園に娘を預けるようになって、自宅の車も思うように使えないから、なかなか大変である。


ぎりぎりとはいえ、きちんと時刻までに検査会場に到着した。
そうそう幾度もそのようなことは出来ないので、いつも一斉検査の時や許可更新手続きの時に、火薬の譲受許可などの手続きも行うようにしている。
火薬については昨年末、許可期間が半年に短縮され、申請に当たっては消費計画書も添付しなければならなくなった。その制度変更があってからは、初めての火薬譲受許可も申請する。
収入証紙の販売業務が、おそらく5時で終わってしまうので、検査会場で許可申請もする旨を申し伝えて、費用相当の証紙購入に先に走る。


いつもの担当者ではなかった。
早く片付けたそうなのがありありで、露骨に嫌な顔をされる。
「もっと早く来なきゃ」と文句を言われ、「一斉検査の時は、人が手薄なので、申請などの手続きは、本来はやっていないんですよ」と勿体を付けられながら、書類を作成してもらう。
ここ10年来、毎年ではないが一斉検査の時に何か申請することは珍しくはないことを知っているだけに、少しカチンと来た。
権威を嵩に着る、あまりよくない態度の対応である。


年々、警察の姿勢や態度は、微妙に時代の空気を反映して、高圧的になったり親和的になったりを繰り返す。
銃砲の許可に関する手続きは、警察側にとって、ひろく「一般市民」と接している、という自覚の薄くなりがちな場面であるから、そういう兆候を現わしやすいのだろう、と何となく勝手に思っている。


今は、そういう状況なんだな、と心の中で褌を締め直し、一礼して署を去る。


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