(初)節句

ひな人形



相方のご両親から娘に、雛人形が届いたのは10日ほど前のことだった。
やさしい表情の真多呂雛だ。


小ぶりとはいえお内裏様から仕丁まで13体5段の立派なもので、届いた時にはびっくりしたが、飾ってみるとその華やいだ空気にうれしくなってしまった。
出入りの少ない部屋の机の上に、そこだけ春が来たような一角を成している。


今月末に、妹が出産を控えているので、今日、少し早めに節句のお祝いをすることになった。
1月末の生まれなので、3月3日を迎えるのは2度目になるが、「初節句」としてのお祝いである。


まだ世間は「バレンタインデー・モード」で、桃の節句を準備するには早すぎるようだ。
雛あられはまだ店頭になく、普通のあられをお供えにした。


私の母が、ご馳走は任せておいて、と近所の和食仕出しをしている店に、祝いの弁当を注文して用意してくれた。
相方はイチゴ好きになった娘に、一緒に食べられる「マクロビ苺大福」を、早朝からせっせと作った。
白玉粉の薄皮餅に、餡として砂糖なしで煮込んだ小豆に干しぶどうを合わせる。聞いたときは少し不安に思ったのだが、出来上がった餡を試食してみると、意外に自然な味である。


今朝は早めに起きて、朝食・洗濯・掃除・水槽の手入れまで一気にやって、客の来訪に備えた。
10時過ぎに、両家から両親が到着して、にぎやかに最後の準備を調える。


相方の母が、娘に手作りの着物を用意してくださった。疲れてしまわないうちに、と食事の前に記念撮影をした。
山吹色の着物は丈もぴったりで見事なできばえだった。
こういう格好をさせると、もういっちょまえに「子供」である。


早めの夕方まで、愉しく一日を過ごした。
なかなか素敵な記念日となった。


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