世界大学射撃選手権(The 2nd World University Shooting Championship 2008)報告

射撃館前にて集合写真


男子50m伏射団体(笠井(関大)・平岡(日大)・木下(立命館))銀

男子50m伏射個人で笠井善仁・銅


 北京オリンピック射撃競技会場となった北京射撃館において、10月8日から11日まで第2回世界大学射撃選手権大会が開催され、ライフル・ピストル・クレーの男女16種目が競われました。ユニバーシアードを主管する国際大学スポーツ連盟(FISU)のもと、今回は中国大学体育協会と清華大学の主催で、29の国や地域から400人を越える選手たちが参加しました。日本からは選手8名とコーチ2名がライフル6種目に参加し、男子50m伏射60発競技の団体で銀、個人でも笠井選手(関西大学)が銅メダルを獲得しました。


 正式に国際大学スポーツ連盟(FISU)の元で「世界大学射撃選手権」が行われるようになったのが一昨年(ピルゼン大会)、ユニバーシアードにオプション競技ながら正式に参加したのが昨年のバンコク大会が初めてと、世界的に見て国際的な大学スポーツの中に射撃がようやく位置づいてきた段階です。


 これまで(昨年のユニバーシアードも含め)FISUへの参加に主導的な役割を果たしてきたチェコの大学射撃協会による巨大な国際ローカル大会、という趣が拭えませんでしたが、今回から競技日程の編成を除き、すべてがISSFルールに準拠した開催となり、ISSF派遣の役員の下、世界記録も公認できる「公式戦」として運営形態が完全に整えられました。


 現地入りしてからUnofficial Trainingが出来ないことを伝えられたり、テクニカルミーティングや競技の日程、輸送体制がめまぐるしく変更されたりするなど、運営面の混乱や、銃の取り扱いへの中国特有の厳しさに由来する、出入国や選手の家族の観戦手続きの困難に、スタッフとして未熟な監督やコーチは翻弄されたものの、大会本部を置く主催者であり選手村でもあった名門・清華大学の学生スタッフたちは大変優秀で、中でも日本チームのボランティアについてくださった肖さんにはたくさん助けてもらいました。選手たちは、半日の観光に同行したスイスチームをはじめ韓国など他国の選手たちと交流を深め、のびのびと国際舞台を楽しみつつ試合に臨みました。


 初日の10m種目では、中村選手がファイナルまであと1点の394点14位、第二日目には、今大会、団体での優勝も視野に入れて、ファイナル練習まで取り組んできた男子伏射種目で笠井選手がトップと同点の593点2位でファイナルに進出。電子標的の異常表示に少し動揺したのか9発目に痛恨の8.9を撃って3位に後退したものの、銅メダルを獲得しました。団体でも、平岡・木下両選手の我慢の射撃が実って、同点最終シリーズ勝負で中国をかわし、銀メダルを獲得しました。同じく2日目に行われた女子三姿勢で中村選手が再び8位と1点差の574点9位、さらに同選手は翌日の女子伏射でも1点差589点10位と、わずかに届かなかったものの、ことごとく入賞ラインに肉薄する健闘を見せました。


 強化メンバーは事前の二次にわたる合宿で、練習や技術講習の他にドーピングコントロールについての講習や、銃器検査や遠征荷物の重量コントロール対策にも取り組み、少ない時間をよく活用して備えることができたと思いますが、検査員がコントロールカードに記入忘れをしていることに試合前に気づいたり、電子標的のトラブルに自分から役員になかなか申し出られなかったりなど、まだまだ経験を蓄積していかなければならない余地がたくさんある、とも感じました。


 そして何より、海外で成績を挙げるには地力が足りない、ということも選手一同痛感しました。笠井の伏射や中村の三種目で健闘が見られた一方で、最下位にもたくさん名前を連ねてしまったことは、日本チームの現在の実力を表しています。こちらで出した成績は、もちろんそれぞれの自己ベストとは言えないものの、国内でのこれまで1年を振り返ったとき、出てもおかしくない程度に「自分らしい」成績であり、力を発揮した上でこういう結果だったことを真っ直ぐ受け止めねばならないと、選手たちとは話し合いました。自分の中の「平均的」なポテンシャルがもっと高くならなければ、本当の意味で国際大会を戦うことはできません。「世界を意識する」とは、口にすることは容易ですが、果たして普段の練習でどれほど高い目標を自らに課すことができているでしょうか。痛い記憶ともしっかり向き合って、今回参加した選手たちが高い志を持つことはもちろん、それを周囲にも拡げていってほしいものです。


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