雪の合宿

雪の滋賀射場



N県の若き国体チーム監督として、すっかり定着してきた感のあるすぎやんから「合宿に来て、練習を見たり話をしたりしてくれませんか」と依頼があり、滋賀県の射撃場で行われた、協会の選手強化合宿に参加してきた。


指導に専念して、夜も講習とかした方がいいのかな、とたずねると「いや、そういうかしこまった感じよりも、一緒に練習して刺激を与えてもらいながら、撃っている様子を見せてもらったり、合間合間に声を掛けてもらったり、質問を受けてもらったりする方がいい」というので、半ば練習モードで出かけた。
集合時間に間に合っているのは、私のほかは大学生ひとりだけというのんびりしたもので、「なるほど」と納得して、ふたりさっさと練習の準備を進めた。
昼前に勢ぞろいした今回の参加者は、女の子ばかり高校生6名と大学生2名、あとは射手をかねた指導者たち、という編成。


すこし寒さが緩んだかに見えた時期もあったのだが、再びの厳しい寒さ。肌を刺す強風に加え、昼を過ぎると雪が舞うというコンディションは、屋外射場には厳しすぎて、練習するには相当に気合が必要だった。
それでも今回訪れてみると、新たにAR射場に車椅子などの転落防止柵がつき、多目的トイレが完成。2FのSB射場には、ビニルハウスのシートを使った防風区画が10射座分整備されており、地道な整備が年々少しずつ積み上げられていることをうかがわせた。いつ来てもここは感心させられる。
昨年の国体での天皇杯2位・皇后杯1位は、ここ何年にもわたるこういう取り組みがあってのことだ。


おもに大学生を相手に、ちゃんとノートを書いてないことを説教したり、逆に射撃を離れて大学卒業後の生活や仕事について聞かれたりしながら練習を進める。SBを撃つのは、11月末の試合以来である。感触を確かめつつ、4時過ぎまで立射・膝射の練習をした。
夜にはミーティングで、おもに高校生の質問に答えながら「談話」した。一人ひとりが心に秘めて持つ目標の大切さや、チームの目標とそれらの関係、試射や緊張についての話になった。


1日目の帰りに降り出した雪は、翌朝一面の銀世界に。20cm近い積雪は久しぶりに見る。ほうきできれいに払い落とせるほどのパウダースノー。なんとかアスファルトは轍が地表まで達していたので、ノーマルタイヤでゆるゆると走って安全に射場にたどり着くことができた。
雪焼けしそうな白銀の射場で寒さと戦いながら、伏射の練習と記録会をして夕方に解散した。


すぎやんの一生懸命で、しかしどこかユーモラスな仕切りぶりは独特で、「強化」一直線という具合ではないが、協会にあかあかと射撃の火は灯り続けていきそうである。
こういう合宿では、2日間で何かが急に上手くなったり、ということは考えにくい。しかし若い選手たちにとっては「雪を掻き分けて震えながらも、必死で練習した」記憶が、ひときわ懐かしい思い出になったりするであろう。意外な場面で、そういうものが励みになったり力になったりするものだ。
撃ちながらふと、SBを始めたばかりの頃に、雪の早朝ひっそりと練習をしたことを思い出したりした。記憶は今も鮮明で、その時の景色、何を練習したか、その時何が課題だったか、といったことまで思い出せる。


この後も忙しい週末が続きそうな私にとっては、今回50mも「始動」したことの意味は大きい。
それぞれの参加者にとって、今回がどんな合宿となってゆくかは、知る由もないが、私にとっては意外に印象深いものとなるかもしれない。


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