困ったPCたち


機材の準備なく、仕事だけが山ほどある、という状況を何とかするために、廃棄予定のPCを20台ほど移管してもらって独自にイントラネットを組み、開校以来4年ほどを凌いだ。Windows 98用のモデルだから、古さは相当なもので、故障が絶えなかった。当時の事務室は、あれこれやりくりしては、何台かずつ新規にPCを購入し、ゆっくりとではあるが機器を更新しながら何とか環境を維持した。2年前にようやく環境の提供があって、移管されてきたPCはお役御免となり、補充してもらったPCは用途替えの作業に入った。
イントラネットは外部から切り離されているのが「売り」であるから、アップデートもできないまま3年近く使い倒したことになる。PCリテラシー的に様々な、たくさんの職員たちが使っていることもあり、あれこれと小さな不具合はたくさん聞いていた。これを機に、主に大型テレビを使った呈示装置用として「社会復帰」させるのだが、取り掛かってみるとこれが予想以上に大変だった。


大して専門的な技能があるわけではないので(しかも本来の業務でアップアップしていて、その傍らに抱え込む仕事なので、なかなかじっくりとは向き合えない…)、ウイルスチェックをして身奇麗にしたり、溜まりに溜まったアップデートを少しずつ行って、ちょっとした問題は新しいプログラムで不具合ごと上書きして解消してしまおう、という大雑把なやり方だ。機械を集めておいて作業場をセットした後は、職場の後輩に方針を伝えて合間を見て作業をしてもらう依頼をしていたのだけれどあっという間に行き詰ってしまった。Windows UpdateやMicrosoft Updatenoの途中で躓く機械が続出したのだ。(全部Xpマシンなのだけれど)SP3にするようにというアラートは出ながら、そのダウンロードもインストールもうまくいかない機械、ほかにも「更新最優先」のプログラムが「挙げられる」だけで、そこからどうにもダウンロードもインストールも前に進まない機械…。中でも最も多かったのは.NET Framework絡みのアップデートに不具合が出るケースだった。Microsoft Updateなどの自動アップデートサービスに.NET Frameworkの更新やパッチ当ては上手く乗っからないようなのだ。「優先度の高い更新」として、後ろに80を越える数の更新項目が閊えているという表示とともに、リストの真っ先に上がってきてダウンロードすらできないエラーとなるので、そのイラッとくる度合いが半端ではない。


引っかかっている.NET Frameworkの該当プログラムを検索して、抜き出してダウンロードし、単独でインストールを試みたりしたが、それもうまく行かなかった。これくらい何台も同じところで躓くなら、きっと同じように困っている人がいるだろう、とKB番号で検索をかけると、出てきた出てきた。マイクロソフトの公式な質問用の掲示板から2ちゃんねるっぽいBBSまで、いろいろなところで、このプログラムのインストールをめぐってはたくさんの人が様々な躓きかたをしていて、強者たちがそこここでそれぞれのやり方で突破していた。
同じプログラムの箇所ながら、一機ずつ躓き方がそれぞれ微妙に違うので、どうしたことかと思っていたのだけれど、なるほどそういう多様な躓き方までうちの機械たちは「ちゃんと反映」していたのかと、感心してしまった。
アプリケーションの追加と削除で確認するとわかるが、.NET Frameworkというのは、新しいバージョンが入っても、前のバージョンが削除されて置き換わるわけではなく、2.0、3.0…と併存している。あるバージョンのところまで削除を行ってからインストール作業に入ればいいものもあれば、それではダメなものもあるという。.NET Frameworkを削除するためのツールまで存在していて、そのお世話になった機体もある。
一つに見える巨大なアップデートプログラムが7-8個のプログラムを合わせたもので、その大きさが自動アップデートでトラブルを生じる原因の一つであることを説明しているページもあり、そこでは部分となるプログラムの各々のKB番号を明らかにして、どの順番にインストールすればいいかを示してくれていた。この通りにやってようやくうまくできた機体もある。


3-4機、こういうのを頼りにあれこれやって突破できたので、すっかりうれしくなった。しかし、残りの機体を見渡すと、げんなりもした。本来はすんなりうまくいくように用意されているはずの自動アップデートがが上手くいかないのは、これらの正面突破の対処法の確かさとは別にして、間違いなく原因がある。想像するに、システム内にツリー構造の崩れやリンクの切れや重複による無効なファイルの散在など、使い倒して生じた「ちょっとした傷」が相当に蓄積してOSが傷んでいるとか、アップデートに関わりのある部分にそういう損傷が起きている、というような可能性は高い。
ウイルス対策ソフトもフリーである程度いいのが手に入るご時世なので、昔のDisk Doctorみたいな、検査修復をしてくれるソフトにもフリーウェアでそこそこのものがあるんじゃないか、と検索してみたところ、あったあった。いくつかそれらしいのが引っかかってきた。ちょっと疲れていたこともあって、たいして比較検討することもなく、よろよろと直感的に選んで、指示に沿ってするするとインストールし、動かしてみる。デフラグツールなんかには一晩くらい平気でかかるのがあるのをふと思い出して、時間が掛かるのだと嫌だな、と思ったが、偶々落としたものには「クイックケア」なんていうのがあって、これを試してみるとものの1分くらいでさーっとスキャンが終わり、どっさり5桁くらいの修復箇所が見つかった。誤修正の危険もないではないが、えいっ、と修復を許可してやると、ビュンビュンとインジケーターが走って、1分くらいで処理は終了してしまった。PCの動きは明らかに軽快になっている。この状態で再びWindows Updateをしてみると、それだけでうまくいくものがあった。なるほどやっぱりか。一律にこれをかけるだけなら簡単な話だ。今回使用したのは、「Advanced Systemcare 4」というソフト。軽くて早いのが大変よろしい。システムの修復だけでなく、マルウェアの検出・処理や、デフラグなどもやってくれる。クイックケアのほかに「ディープケア」というのもあって、10分強の時間をかける余裕があれば、一般的なケアはひと通り出来てしまう。これはいいものに当たったかも知れない。


ただ、これだけではやっぱりダメな機体もあったので、もう一つの可能性(自動アップデート機構の方の不具合を疑う)の方も検索して当たってみた。するとこれはこれであっさりと見つかった。Microsoftが、よく起こる不具合の種類ごとに、診断と解決のプログラムセットを揃えた「Fix It」という無料サービスを行っていて、そこにずばり「Windows Updateの不具合」という項目があるのだ。私が疎くて知らなかっただけで、たぶんこのサービスは「このごろの一般的な対処法」のひとつなのだろう。早速試してみる。Web上でプログラムを走らせるのが一般的な使い方のようなのだが、それはどうもうまく行かず、ネットから切り離されたPCを修復するために用意されている、「Fix It」のプログラム自体をダウンロードするサービスを使って、ようやく動かせた。予想通り、「問題」が検出されて「修復」が行われる。


結局、アップデートできずに困っていた機体の残りは、このFix ItとAdvanced Systemcare 4を使うだけで全部片付いてしまった。なるほどねえ。動きに軋みのあったPCがなめらかに作動するようになったので、ひとまずOKである。後は新しい用途に合わせたセットアップをするばかりである。行き詰ってから半年あまりそのままになっていた懸案が片付きそうで、やれやれである。


[fin]