山口へ

山口新射場



2011年の山口国体に向けて、数年前から始まった県の強化事業のお手伝いを、継続的にさせてもらっている。
1月はじめのランクリストマッチの時期に合わせて強化合宿が組まれ、その講師役で参加するのは、昨年度に続いてのことである。
これまで、県内に実射のできる練習場がなく、県から1時間半ほどの広島の射撃場を会場にして行われてきたが、今回は、宿願かなってついに完成した、山口県の射撃場での開催となった。


新射場は、市内から車で30分弱で、AR・SBの射座が並んでおり、ともに屋外に設置した標的を撃つ構造である。標的側に水がはけるように射座側は腰の高さまで壁になっており、射台に乗って伏射や膝射を行う構造になっている。
レーニング用として、コンパクトでなかなか素敵な射撃場である。
コンパクトな射撃場に行くといつも、京都で学生時代にお世話になった八瀬の射場を思い出す。じっくり練習するには、愛着をこめやすい小さな射場がいい、と思う。


集まった人々を前にして練習会の冒頭、1時間程度講義をする。
射座の後ろにいすを並べて黒板も何もなく、本当に「お話」する、という感じで、ちょっと緊張した。
今回始めて参加する高校生が多いのでその辺りを対象の中心に、ということだったので、顧問の先生とアイコンタクトを取りながら、サッカーやバスケットボールなどのスポーツを引き合いに出して、射撃というスポーツの練習はどんな風にするべきか、を端緒に話を進めた。


動きが少なく、「銃」というとても気を取られる道具が真ん中にでんとあるために、見えなくなっているものがたくさんある。
射撃とはどんなプロセスからなっていて、何がどううまくなれば、上手くできるようになるのか。他のスポーツもきっとそうなのだろうけれど、そういうことを「教わる」過程が、特に重要な競技なのではないか、という気がする。
社会人にも練習で紅白戦みたいなことばっかりやっている選手が少なくない。


高校生が対象ならではの、「チームワーク」についての話もする。
「部活」として射撃が成立すること、がチームの草創期にはとても重要なことである。
私はそういうことについて特別に経験が多い、というわけではないけれど、「個人競技」といわれるものほど他を思いやる「チーム意識」が大切であることは、よく話す内容である。
水泳ニッポンの復活が強いチーム意識の浸透とともにあったように、個人競技において、組織やチームが果たす力はきわめて大きく、勝敗の命運を決定づけるものである。
しかし、競技自体が人間関係を揉み、否応なくチームワークが育まれるチームスポーツと違い、個人競技では選手個々が意識的にチームワークを作っていく努力が不可欠で、また難しい。


さて講義は、最後に話を膨らませてくれるいい質問もあって、充実した内容で終えることができた。


その後は、うろうろと各射座を見て回り、尋ねてくれる選手を中心に積極的にアドバイスした。
風がなく穏やかな天気だったが、屋外射場だけに結構冷える。その中でみな熱心に練習をしている。
助言に手応えを感じてくれる人が多く、こちらも回数を重ねてこのチームを指導していることによる手応えを感じた。


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