治る


ここまで3日間相方に休んでもらったが、今日は私の方が、少し無理を言えるシフトだったので、娘を引き受けた。


医師の言ったとおり、熱は昨日までの3日間、見事に下がらなかった。
ただ、少し食欲が人並みに落ち着いてしまったほかは、嘔吐もなく、水分もまずまずきっちりと摂ってくれて、時間をかけて様子を見る、という感じでここまで来た。
とにかくよく眠る。
起きている時もおとなしい。


今朝、さわやかに起きてきた、と思ったら、ついに熱が下がっていた。
小児科の予約を取って、治ったかどうか、診てもらうことにする。


娘はこれまで幾度かお世話になってきているが、私はこの小児科に行くのは初めてだ。
診察や説明が丁寧で、きつい薬に走ることなく、しっかり診てくれる、と評判の小児科である。
娘が元気になった手応えがあったので、少し心にゆとりをもって医院に入ることができた。


明るくて、どことなく楽しい雰囲気のある待合室だった。
女性スタッフが、待っている席まで来て、からだの具合を、シートに記入しながら丁寧に聞き取ってくれる。
程なく呼ばれて診察室に入ると、ジーンズにカジュアルなシャツの医師がにこやかに待っていた。
小児科には、今時珍しくはないのかもしれないが、初めてだった私は、その姿に「お」、と一瞬たじろいだ。


白衣を見ると泣く、という子は多い。泣かずともある種の緊張感はみな感じるものだ。
診察室はある種の「舞台」だから、「医師」の役割を演出する白衣は、それ自体が治療行為の重要な一部でもある、という話を、私は強く支持するが、小さな子にその「力」が作用するには、ある種の「物語」教育のような「下地」が必要だったりして、いつも効果を発揮する側に作用するとは限らない。
「親しみやすさ」の方を取る理由は、十分にある。


娘は落ち着いて、喉の奥を診てもらっていた。
喉の腫れは引いていて、明日から保育園に行っても大丈夫、と太鼓判を押してもらった。
アデノウイルスの説明をしてもらったが、何十種類というウイルス群で、異なるウイルスに対して免疫がつくわけではないので、ほかのに罹る可能性はずっとあるのだそうだ。
昔から子供は幾度もやることになっている「扁桃腺が腫れて熱が出る」、はこいつのことだったのだなあ、と納得する。


治癒証明を書いてもらって家に戻った。
父娘二人、というのも悪くなかったが、実家に行くことにした。
庭で遊んだりして、のんびりとすごさせた。


[fin]