林氏の講演会


関西大学のミーティングルームで「勝負脳」・林成之氏の講演会があり、聴きに行った。
職場から急いで駆けつけたが、到着はぎりぎりになった。
学生連盟の主催、ということで関西学連の加盟校から学生が集まっており、平日の昼間にもかかわらず部屋はいっぱいだった。


本に書かれている内容に留まるのかな、という不安があったのだが、きちんとご自分の理路が「射撃」にどう適応できるかを考えなおしてプレゼンテーションを作りなおしておられた。誠実な準備に感銘を受ける。
脳外科医として脳の機能にかかわりのある領域の話をされるのとは別に、スポーツ科学的な筋力の話なども交えられていて、さりげなく多彩な内容だった。


最も興味を惹かれたのは「前意識」に関する内容だった。
高い集中に伴って反応がどんどん速くなり、まるで未来が見えているかのように予測が冴えわたる状態があるが、このとき「前頭葉10野」が特異的に活性化しているという。
これら、高いパフォーマンスの状態は、情報獲得や判断や出力反応の速さと密接に関わっている。それらを得るには、意識を介在させずにこれらを生じて、望んだ状態に帰着させることが必要である。
「下意識に委ねる」というやや消極的な表現はこれまでにも使ってきたが、もう少し積極的な「何か」は、あるのだろうか。
まずはその状態を引き出しやすくするための、「整えるべき環境」について、パフォーマンスの内容を再点検してみようと思う。


「導くために有効」として取り上げられた視覚的なイメージについても、アーチェリーなどの例を聞いて、今日新たにはっと気がついたことがある。


また、10野だけについてコントロールはできなくても、それがある「前頭葉」全体の反応を高くすることが、10野も活動しやすくすることにつながる。
各野が担う機能については、明らかになっているものも多く、三次元的に近接する領域には機能にも連関があることが多い。
物的に提示されるものから、行為に対する解釈ががらっと違って見えてくることもある。思わぬものが、実は強い結びつきを持っているかもしれない。


「心理学」やメンタルな面についてのメソッドが経験的なものの分析からアプローチするのに対して、脳科学は実体の裏づけにこだわって、事象に関連付けを行っていく。
脳について解明されている科学的成果の量に制約される弱みはあるが、経験的なものだけでアプローチしてきたものに対して、強いスクリーニング効果があることは疑いがない。
今日の内容を少し整理して、考える材料として活用しようと思う。


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