アジア選手権代表選考会

10mS60M決勝風景



木曜日の仕事を定時に何とか切り上げて仲間と落ち合い、夜の高速をかっ飛ばして、広島までアジア選手権代表選考会に来た。


夜着の翌朝一番撃ち始め、は我々一般社会人射手にとって遠征の常だが、だからと言って、慣れてどんどんうまい調整法が身についていく、というものでもない。何に気をつければうまく凌げるか、勘所がわかってくる程度のことである。


アジア選手権代表選考会だが、今回の試合は来年の北京五輪代表を決める上でオープンに行われる、実質的には最終の選考会である。
前回のアテネ五輪は、日本が獲得した出場枠が確定してから、代表選考会を大会数ヶ月前に開催して決めた。しかし今回の北京五輪は、「五輪出場枠獲得者を五輪代表選手とする」ことになっている。
今回の北京五輪に向けては、日本は先のワールドカップでピストル二種目の出場枠各1つを取ったばかりで、ライフルはまだ1つも取れていない。五輪出場枠を取れる大会は、アジア選手権が最後。
つまり、このアジア選手権大会に出場して、なおかつそこで五輪出場枠を獲得しなければ、五輪の日本代表選手にはなれない、ということである。


最後までオープンに代表を競う方法には、五輪を一部スポーツエリートだけでなく、そのスポーツに携わるすべての人に関わりを意識させ、競技や育成へのモチベーションを高める力がある。特に若い選手に広く希望を抱かせる効果がある。そしてなにより、五輪本番直前に最も調子のいい選手を代表とすることができる。
その一方、ギリギリまで代表権獲得に神経をすり減らさなければならないため、代表となった選手が十分に調整できない、という難しさがある。また、出場枠獲得自体が難しい現在の日本のレベルからすると、出場枠獲得という大変な功績が、選考会で無になってしまうかもしれない、という「過酷さ」が、代表を決める協会側にも同じようにのしかかる。


選手として出場していながら、他人事のように言うけれど、今回の試合は、本命の選手ほど大きなプレッシャーがかかるだろうと思う。私は、本命ではない。本命に嫌がられる役割だ。
誰かがアジア選手権で五輪出場枠を獲得してくれなければ、五輪に選手を派遣できない協会としては、本命筋の選手が勝ち抜くことを祈りながら見ているはずだ。
(優先的に調整に時間を充て、成績が仮に悪くても「ベストを尽くしてくれたのですが」と対外的に説明できる選手が、選考するサイドからはありがたい。どうしてこの成績の水準を維持できているのかが理解されない、私のような選手が選考会で活躍することを、協会はよろこばないはずだ)。


果たして。4日後、どんな結果が揃うのだろうか?そして来年夏、どんな布陣で、どんな五輪を迎えるのだろうか。


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