初心者と教習者のためのてびき


この週末に、熊本で全国高校射撃部の定例総会が行われる。そこに招かれて、高校生への指導に関する講義を依頼された。
何を話すか迷っていたが、主幹を務めるM先生からは、学校から顧問を頼まれてはじめて射撃を知った先生が多いから、技術面のわかりやすい話がいい、ということだった。そして、私が学生時代に部員の指導用に書いて、もう15年来ネット上に公開してきた「初心者と教習者のためのてびき」を教材にしては、とリクエストされた。
確かに、経験者の入部が皆無で、全員が本当の「初心者」からスタートするうちの部の指導と、これもまた初めて射撃を始める者ばかりであろう高校1年生の指導は、あまり変わらない。


母校の射撃部では、今もこの「てびき」を使っての教習指導が受け継がれている。しかし書物としては完全に放置したままだ。
(射撃部のHPには、かなり前の部員が作った、図のずれたりした問題の多いPDF版が置いてあるが)最終版を増刷するには、紙ベースの原版をコピーするしかない、という状態になっている。
書いて17年が経つが、今でも射撃入門としては他に類書がないこともあって重宝されているらしく、初対面の人に「使わせていただいています」と声をかけられることがある。多分私の書いたものの中では群を抜いて、人との縁を最も多く結んできたものである。少しくらい気にかけてメンテナンスしないと、と思わないでもなかったが、これまで何もできていない。
経験こそ多少積んだものの、記述者としてはこれを全面改訂するほどに私が成長したかが怪しいことや、腰を据えて改訂作業に取り組むような状況になかなかないことからだが、腰を上げるきっかけに欠いていたことが大きい。
また、最終版になっている印刷版のデジタルデータが、クラリスワークスで作成されたものであったため、当時とPC環境が変わってしまった今、手がつけにくかったということもある。


私自身射撃について人前で話す機会も多くありながら、これほど長く公開しているこの書物については、これまで一度も話してこなかった。
M先生に言われてみて、私にとって「原点」のようなこの冊子をちゃんと読み直して、話すには最高の機会なのではないか、という気持ちが湧いた。
ただ、講習会の資料として、60ページもあるものを配布するのは、主催者に大変な手間をかけることになる。
大丈夫でしょうか?と尋ねると、「用意します、持って帰ってもらいましょう」、とM先生は豪気に言ってくださった。


「それならば」。
その意気に応えるべく、最終版をちゃんとしたPDFに作り直すことに決めた。
二晩で仕上げる予定で、旧来の紙ベースや古いデジタルデータの図版を集め、テキストデータと合わせてゆく。
ワードで作業したのだが、Mac版とWin版で微妙にずれるため、編集は修正段階で難航した。フォントをヒラギノにしたい、というこだわりがあって、Macで仕上げる。
今日なんとかM先生にメールでデータを送り届けた。


もともとの原稿は全部便箋にせっせと手書きしてはSくんに渡し、オアシスで活字にしてもらったものだ。教習開始直前になんとか完成にこぎつけて、明け方にせっせと3人でコピーしたときのことを思い出した。
今回久しぶりに全体を読み直して、ちょっと恥ずかしくもあったけれど、よくできてるな、と思えた。


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